つぐないの家
投稿者:LAMY (11)
「……いや、駄目だわ此処。この部屋だけは絶対ヤバいわ」
肝試し自体には乗り気だった板垣が、今は顔を青くしてかぶりを振っている。
田中に負けず劣らず怖いもの知らずな彼がこうまで怯えているその事実が、目の前の部屋を暴こうとすることのまずさを裏付けていた。
けれど今に至っても全く聞こえない、感じ取れない田中には、すべて馬の耳に念仏だったようで。
「お邪魔しま――っす!!」
そう言いながら、田中は襖を開け放った。
その、次の瞬間である。小野さんも、板垣も、その他の仲間も、田中も。
全員ほとんど一斉に、絶叫しながら踵を返して走り出したそうだ。
「ああああああああああああ!!!」
「ヤバい! ヤバいヤバいヤバいヤバい! ヤバいって!! あれはマジでヤバい!!!」
廃墟の中は道が狭く、譲り合わないとおしくらまんじゅう状態になってしまうのだったが、そんなことお構いなしに小野さんたちは我先にと出口を目指した。
とにかく一分一秒でも早く、誰よりも遠く、あの寝室から離れたかったからだ。
寝室の中にあったのは、予想通りの光景だったという。
天井からぶら下がった老婆が、左右にぶらんぶらんと揺れている。
振り子のようなその動きに伴って、あの耳障りな音がぎし、ぎしと響いている。
目はうつろに白濁していて、口はぽかりと開かれたまま。一生忘れられないだろうと確信するに足る、悍ましい「それ」を、全員が確かに見たのだそうだ。
その後のことは、正直よく覚えていないんだよね……と、小野さんは言う。
無我夢中で駄菓子屋を飛び出して、気付けば田中の家に転がり込んでいた。
しばらく皆田中の部屋でずんと沈んでいたのだが、しかし時間が経つにつれてあの恐怖も薄れていったという。
そしていつしか、「狙い通りヤバい体験ができた」という喜びが勝るようになっていった、らしい。
「いや~……ヤバかったな。幽霊って本当に居るんだな」
「あの婆さんの顔、しばらく忘れられねえわ」
何せ、板垣以外は霊感のない人間ばかり。当然、そういう奇怪な体験をした覚えもなかった。
体験した瞬間と直後は無論怖かったのだろうが、喉元過ぎれば何とやら。
小野さんも含めて皆戦勝会のような雰囲気になっていたそうだが、その中で唯一、霊感持ちの板垣だけがずっと顔を青くしたまま震えていたそうだ。
「お前もそろそろ元気出せって。あんなの日常茶飯事で見えてんだろ?」
「……お前ら、本当にあの部屋の中見たのか?」
からかい混じりの励ましに、しかし板垣は青い顔のままこう返したそうだ。
「見たよ。だから全員走って逃げたんだろが」
「ババアだけか?」
「は?」
続く板垣の言葉に、その場はしんと静まり返ったという。
素晴らしく、読ませられる文章。怖い。
これ、俺の地元の駄菓子屋かも……
導入のお婆さんと子供の話がいい。めっちゃ引き込まれた。
今回の作品もとてもおもしろかったです
毎回会話に引き込まれる いや引き込まれるって書いたら怖いか
目先変えて ほっこりする話しでも聞かせてほしいです
導入から引き込まれるし、退屈させない、オチでしっかり怖い話でした。
どういうジャンルの話書いても上手いんじゃないかなこの方…
ババアより嵌めた元友達の枕元に拍手しに行けよ
これ悪いのばばあじゃなく嘘ついたガキじゃね?化けて出るならソコ行けばいいのに
こえ~~~
悪いのはババアもなんだよなぁ。
「死んで逃げるなんて卑怯」だね。
死んだ後も責め苦を受けてるみたいだけど。
幽霊よりも簡単に手のひらを返しまくる人間の方がよっぽど醜悪で恐ろしいよ。
老獪な老婆が「片口」をどうして信じた。
年齢を重ねるということは、人間はウソをつき、誤解も思い込みもするという知識を経験則として身につけることだ。
だから人の告げ口よりも、自分の経験や印象、目の前の事実を大事にする。
それに反する密告者の密告など真に受けるだろうか。
良かった
怖いというか胸糞悪い話だな。タイトルも不気味でいいね。
うまいなぁ!
見えるきっかけってこう言うもんなんだろか?
駄菓子って最近ないやん!
みみたぶをたたく
いやまあ誰が悪いかを真剣に議論する場ではないから…w
描写が丁寧でいい話だと思いました
ドンマイバッバ
フォーエバーバッバ
まあババアもやり過ぎよね、みんなのお婆ちゃんたろうとする人のやる事じゃあないわ
子が死んだ後もなお悪口とかね
ぐう畜ババア
呪怨のトシオくんが首吊り死体を座りながら壁にドーンドーンってぶつけて遊んでるシーンを思い出してほのぼのした
おばあちゃんも○○ちゃんも可哀想だね。面白半分で行っちゃだめだよ。
子どもたちの焼きもちから派生したいたずらが、こんな恐ろしい形に変化するとは…。
この件に関わったかつての子どもたちも、親たち世代も、何らかの形で自分たちの過ちを問われることになるでしょうね。万引き事件を、もっと詳細に、丹念に関わってあげていれば、こんな悲劇にはならなかったはず。厳しさには優しさと愛がなければね。駄菓子屋のおばあちゃんは、ひとり暮らしだったんだろうか。冷静な判断をくだせる家族と暮らしていれば、また違った展開になっただろうに。この手の話は、後味が悪いだけに、じわじわとした怖さが残ります。
こう言う婆さんみたいに正論で人を傷つける人は無理。
本当にいい人は人を傷つける言い方はしない。
嘘をついた周りの子や万引き犯の女の子や家族にバチが当たりますように。濡れ衣を着せられた子は天国に行って幸せになりますように。
文章が読みやすくて良かったです。お話もとても良いです。
タイトルも的確な名作ですね。
是非、朗読で聴いてみたいですね。
怖くて話は良かった。万引きは余り良くないですね。罰当たりかもしれないです。
凄く怖いかったです。でも幽霊は意味がわからないです。
凄く怖いかったです
1番悪いのは無実の女の子に罪をなすりつけたクソガキだろ
↑そうだよ。なすりつけた子共だよ。
そういう子供にしたのはご両親だよ。
なんか普通に怖くない風になっているけどおばあさんがそこにいるだけでも相当な怖い話
こわいの前に、文章の書き方がとにかくお上手
情景が鮮明に浮かぶ、無駄がない、ちゃんとこわい
ストーリーも文章もかなり上手かった
ただ、そりゃ悪いのはそうだけどバッシングされながら後悔のままに死んだババアを死体蹴りするより
全ての元凶でありながら平然と勝ち逃げしてるクソガキたちに爆笑拍手しにいけやとは思ったね
自殺した子、婆さんのこと慕ってたんだろな…
自分を信じてくれず憎まれた事が、なにより悲しくて悔しくてたまらなかったのだろうな…
せめて婆さんが死ぬ前に心から謝罪をしていれば、彼女も怨霊になんかならなかっただろうに…
婆さんが自殺してからは、首謀者の子たちにいじめの矛先が向かったことは容易に想像できるね。
この環境じゃ…
1番タチが悪いのって「便乗勢」だよね。
ネットでもそう。
ぶっ殺された子どもがたのしそうならいいのだが
何故婆さんのとこにバッシングがいったのか全くわからん。嘘の密告した奴が首吊るってなら分かるが。
告げ口のガキ、取り巻きのガキでなく、婆さんがバッシングされたの??
女の子の親も担任も学校側もその子を信じてやれなかったんだよね?
学校「皆さん、あの店には行かないように」←どの口で言ってるの???
イジメられっ子自殺
イジメっ子が万引き犯だったとイジメっ子の親が知る
イジメっ子の親「婆さん所に謝りに行こう」
↑↑
これ!
本当にこれ!
これを純粋なフリした極悪と思うのは私だけか。
本当の悪魔ってこういう人だと思う。もう、おぞましい
胸糞だわ、嘘付いたガキとその仲間は呪われて早死にしてることを祈る
みんな悪を叩く正義になりたいんだよね…
爆笑拍手wをやめて成仏されますように。。南無。。
ところで、イジメっ子の親は立派な方でしょう。揉み消さずに我が子の罪を白日の下にさらした。わざわざ婆に謝りに行ったのだから、もちろん自殺した子の親にも土下座しに行ってるでしょう。下手したら自分の子供やその親である自分に対して、婆が受けたのと同じ社会的制裁が待ってるのに。
人の親たるもの、かくありたいものです。