山の祠
投稿者:煙巻 (8)
すかさず俺は走り去った。
すぐに下山して麓の自転車に跨って爺ちゃん家まで飛ばした。
あれに追いつかれたら殺される。
どういう訳かそればかりが脳裏に浮かんで、一歩でも遠くへ逃げる事を優先した。
そして、数十分かけて家に戻るなり、
「爺ちゃん!」
と、何故か俺は爺ちゃんに助けを求めた。
麦茶の入ったコップを片手に縁側で寛いでいた爺ちゃんは「どしたね」と微笑んでいたが、俺が肩で息をして顔面蒼白な顔を向けると、すぐにキリっとした神妙な顔つきをしたのを覚えている。
更に爺ちゃんはコップを置いてサンダルを履き庭へ飛び出すと、俺の両肩を力強く掴んで、
「お前、あそこ行ったんか!」
と凄い形相で怒鳴りつけてきた。
爺ちゃんの気迫に怖気づいて震えるようにして頷くと、爺ちゃんは苦悶の表情を浮かべ、すぐに俺の両親を呼び寄せた。
「すぐに帰りんさい。ほら、支度せんと」
「え、どうしたんですが急に」
ブツブツと独り言を言うように爺ちゃんが顎を擦っていると、父が事態を把握できずに立ち往生していた。
父は俺が何かしでかしたのかと思い俺を見やるが、俺は咄嗟に顔を余所に向けた。
「……あそこに行ったんよ」
父に気を遣ったのか、爺ちゃんが渋々そう呟いた。
すると、父は何か悟ったのか、ハッと顔を上げると俺の顔を再度確認する。
「しばらくはここに来ん方がええじゃろ。念の為に」
「……わかりました」
爺ちゃんと父のやり取りは理解できなかったが、少なくとも俺が悪い事をしでかしたのは理解できた。
たぶん、あの山の祠から出てきたあいつが関係している事も薄々気づいた。
そうして急遽帰宅の準備が始まり、俺は婆ちゃんと別れの挨拶を交わす。
「可哀相にね。ちゃんと御飯食べて、しっかり寝るんよ」
「うん」
何が可哀相なのか分からないが、俺も婆ちゃんの料理が食べれないのは残念だ。
それにしばらくここに来てはいけないと告げられたから寂しさもある。
そして、爺ちゃん婆ちゃんと別れの挨拶を済ませた俺は車に乗り込んで、昼過ぎには出発して帰路につく。
こうして俺の祖父母の家の帰省は唐突に幕を閉じた。
こういう王道なの待ってたよ
なんだかんだ
「お前、あそこ行ったんか!」みたいなのってベタかもしれないけど面白い
八尺様的な
そんなに危険なら始めに教えておけよ
あるあるだね
なんかSCPのシャイガイ想像した
この手の話は危険なのに、何故か何も教えずに、
近づくなとか、余計な事は知らなくてもいいとかしか言わんよな。
結果、好奇心から悪い結果になるパターン。
とても良かったです!他の方も、先に教えておけば…と書かれていましたが、逆に教えてしまうとそれこそ好奇心だったり、確かめに行きたい!と思って行ってしまう人のほうが多いのでは?大人だからこそ話半分で聞けることも、子供にとってはそうじゃないでしょうから。
古き良き『〇〇、あそこにいったんか!!』が聞けてよかった