山の祠
投稿者:煙巻 (8)
中学の頃までは毎年恒例夏休みには爺ちゃん婆ちゃんに会いに親の実家に帰省してた。
俺は東京郊外に住んでるんだけど、俺の実家と比べると祖父母の家は古臭い上に近辺にコンビニが一件あればマシな片田舎で、大きなショッピングモールのビル何かは見当たらない様な辺境だった。
そればかりか周囲が山に囲まれた盆地だ。
だから俺にとっての帰省は「何もすることがない」そんな退屈な行事だった。
「よう来たね」
「たっくん、大きいなったの」
「久しぶり」
爺ちゃん達はこのくそ暑い炎天下だと言うのに、孫の到着を敷地の前で待っていて、俺達家族が乗った車が見えるなり大きく手を振って出迎えていた。
それほど喜んでくれるのは嬉しいが、流石に炎天下で待ちぼうけは止めた方が良い。
「暑いから中入ろ。倒れるよ」
「そやね」
爺ちゃん達は優しいしお小遣いもくれるから好きだ。
でも、やっぱりこの田舎は退屈だから嫌いだ。
それが俺の素直な気持ちだった。
俺は婆ちゃんに肩を貸しながら照り返しの眩しい石段を上がって家へ向かった。
食卓には既にいくつかの豪勢な手料理が並べられていた。
婆ちゃんの手作り料理は古き良き日本料理が多く、錦糸卵やキュウリの細切りが飾り付けられたソーメンとか、夏野菜の炒め物、ピーマンの肉詰、茄子のおひたしとか、小鉢が何品も用意されている。
ここは母方の実家なんだけど、俺の母はそこまで料理が得意という訳ではなく、かといって不味い訳でもない。
何というか、奇抜の一言に尽きる。
カレーにちくわが入ってたり、照り焼きにソースを使ってたり。
蜂蜜レモンに対抗して梅干しとレモンのドリンクを飲まされた時は酸っぱさと不味さで吐きかけた。
そういった地味に訪れる死線をくぐり抜けた俺にとって婆ちゃんの家庭料理は料亭のフルコースに匹敵する御馳走だった。
食事を済ませた昼過ぎ、父の一言で恒例の墓参りに出かける事になった。
母方のご先祖様が眠る墓所は、家から車で五分もしない距離にあって、山の麓に車を停めて更に徒歩で五分程度の高台、つまり山の中に建てられている。
毎年舗装もされていない土道だけの山道を登っている俺だが、足場は人力で整地された土の上に素人が取り掛かった様なレンガの階段があるだけなので本当に登りづらくこれも嫌いな行事の一つだった。
おまけに山の中は虫が多い。
爺ちゃん達はよくこんな辺鄙な所に通えるものだ。
そして、現地に到着すると、車に積んだ荷物の中から盆灯篭や水桶は父が持ち、俺は線香とかの小物が入った袋を預かる。
母は団扇と虫除けスプレーを握り絞めて準備万端だった。
そこまで勾配ではないが、少し登った所にある墓所まで登るとそれなりの高さになる。
俺は婆ちゃんに肩を貸しながら亀の様にしてゆっくりと進んでいた。
こういう王道なの待ってたよ
なんだかんだ
「お前、あそこ行ったんか!」みたいなのってベタかもしれないけど面白い
八尺様的な
そんなに危険なら始めに教えておけよ
あるあるだね
なんかSCPのシャイガイ想像した
この手の話は危険なのに、何故か何も教えずに、
近づくなとか、余計な事は知らなくてもいいとかしか言わんよな。
結果、好奇心から悪い結果になるパターン。
とても良かったです!他の方も、先に教えておけば…と書かれていましたが、逆に教えてしまうとそれこそ好奇心だったり、確かめに行きたい!と思って行ってしまう人のほうが多いのでは?大人だからこそ話半分で聞けることも、子供にとってはそうじゃないでしょうから。
古き良き『〇〇、あそこにいったんか!!』が聞けてよかった