雨音の正体
投稿者:HOD (11)
私が高校生の頃です。
兄がよく週末にドライブに連れて行ってくれました。
事情があり、両親とは少しの間、離れて暮らしていたため、当時は気づきませんでしたが、今にして思うと兄が私を心配して気分転換させてくれたのだと思います。
その日はアルバイト先でオーダーミスをしてしまい、お客様からも店長からも叱られて気持ちが沈んでいました。
兄から、じゃあ海でも見に行こうか、と。広くて綺麗な海を見たらきっと嫌なことは忘れる、と提案してくれました。
海なし県ではないのですが、市街地住みだったので、海までは片道3時間ほどかかります。
アルバイトが終わった後からだったので、出発は晩の21時でした。
それから移動しても、当然真っ暗でした。
それでも、ドライブ中に歌を歌い、気分はスッキリしていました。
深夜に到着し、とりあえず仮眠してから帰ろうか、ということになりました。
シートを倒すと、疲れていたので、すぐに眠れました。ふと、ザーッとものすごい雨音がして目が覚めました。あたりは真っ暗なので、見えないのですが、車の天井に雨粒が、それもとても大粒の雨粒が次々とあたっているようでした。
せっかく綺麗な青い海が見られると思ったのに、雨なのかぁ、と思いながら、また眠ってしまいました。
朝になり、兄に、雨すごかったよね、と言うと、キョトンとしています。
明るさで目が覚めたので、あ、もう晴れているんだ、よかった、晴れたんだ!と気づき、周りを見ると路面が全く濡れていません。
あれだけ長く、大雨だったはずなのにどうして、と思い、外に出ると、車は大きな屋根のあるところに停められており、そもそも雨が落ちてくるはずがないことに気付きました。
え、でも絶対雨の音だった、と兄に説明すると、兄が車を確認してくれました。すると、兄がすぐに帰ると言い出し、途中のガソリンスタンドの洗車機で車をきれいにしました。
あとになって話してくれたのですが、あの時、車の天井を確認すると、おびただしい数の小さな手型がついていたそうです。
私の聞いた雨音は雨ではなかったようです。
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