おたくまわり
投稿者:HOD (11)
これは私の父の実家で古くから続く不思議な因習です。
父の実家は関西地方にある県の離島です。
その為、お盆やお正月など定期的に帰省することもなく、冠婚葬祭や法要の時にだけ家族で行きました。
結婚などの慶事よりもお葬式、法事、法要の方が大切にされてきたように思います。
ある日の朝早く、電話が鳴り、母が父を呼び父が電話口に代わりました。
それからバタバタし始め、私の学校へ母が連絡し、電話を切るなり、
「お父さんのおばあちゃんのおウチへ行く準備をするからあなたも服を着替えなさい。
なるべく急いで。」と言いました。
母の剣幕に私は理由も聞けずに服を着替え、自分の荷物をまとめました。
中学生の頃だったと思います。
祖母宅に向かう途中で、
「お父さんのおばあちゃんが亡くなったそうよ。それで今夜は通夜、明日がお坊さんを呼んで葬式よ。」
と母から聞きました。
父がぽつり、ぽつりと話し始めました。
「死んだばあさんはな、信心深い人で、お父さんが小さな頃から朝早くから神棚にご飯と水をお供えして、そのあと仏間にある仏壇のご先祖さまにお供えをしていたんだ。
湯気をご先祖さまが召し上がると言って、ご飯が炊けるとおそなえしていたなあ。」
「それと…。」
「それと?」と私は尋ねました。
「お葬式のあと、49日が終わるまでお父さんは、毎週おばあちゃんの家に行くことになるから、母さんとお前は家にいなさい。」と言いました。
普段遠いから、と定期的な帰省も避けてきたのに変だなと思いました。
「毎週?どうしてそんな?」と回数の多さについて質問しようと思ったのですが、
「そうね、本当ならずっといたいでしょうね。おばあちゃんにとって、お父さんは大事な子どもでしょうし。
お父さんも仕事がなければ…ねえ。せめて毎週行ってあげて。」と母もよくわからないことを言います。
両親の話す様子を見て、子どもだった私は黙ってうなずくしかありませんでした。
父の実家へ着くと、父の兄、つまり叔父夫婦が出迎えてくれました。
「遠いところよくおいで下さいました。」と叔母が形式ばって言います。
「いえいえ、このたびはご愁傷様で。」と母が他人行儀に返します。
「それで、兄さん。どうする?ご近所さんは何人?」と父が叔父に聞きました。
「どうするもなにも。アレは俺の代で終わりにして、明日の葬式のあとのお膳で初七日法要にして、その次は49日の忌明けだけにしようと思っている。
もうそんな時代じゃないだろう。」と話しました。
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