というと、
「夜勤が長かったから、これからは決まった時間に寝て決まった時間に起きる事から始めなさい。」
と言われたので、早速その日からやってみた。
その日は12時ごろにカーテンを閉めてベッドに入ったものの、夜勤に慣れていたせいか、なかなか眠れなかった。
深夜の何時だろうか、起きているのか寝ているのかはっきりしない状態で何となく窓の方を見てみた。
窓の外はあの日転落したベランダがあるのだが、月明かりのカーテン越しに誰かの人影のような物が見えた。
ベランダに誰かいるのか…?
もしかしたら泥棒かもしれないと思った僕は、ベッドから起きて窓に向かった。
カーテンをそっと開けると、ベランダには黒い影のような、輪郭がはっきりしない人間らしきものがいた。
僕はそれが一体何なのかわからず、その全身を舐めるように見ていた。
するとその影は手を僕の方へ伸ばし、こっちへ来いというジェスチャーをしてきた。
なぜか僕は逆らう事が出来ず、ゆっくりと影の方へと歩いてベランダへ出た。
影は少しづつ後ずさりをしながらこっちへ来いと手招きをしている。
影の後ずさりに合わせて、僕はゆっくりとベランダの手すりまで歩いていた。
影はいつの間にかベランダの外にいて、手すりから2メートルほど離れて宙に浮いていた。
これ以上そちらには行けないのだが、影は手招きをやめない。
それでも、僕はそちらに行こうとするあまり、上半身が手すりを大きく乗り越えるような格好になった。
影はまだ手招きをしている。
僕は誘われるように、影に向かって手をのばすと、とうとう足がベランダの床から離れてしまった。
後はもう頭から地面に落ちるしかなかった。
その数秒間、僕は地面をただ見つめている事しかできなかった。
だから、このままではあの日と同じ事になると思っていたが、これが夢なら助かるかもしれないとも思った。
しかし、これから頭を打つであろう場所には、母のプランターは無かった。
どうなったの?
コメントありがとうございます。
最初の方に
>もしプランターが無かったら、けがでは済まなかったような落ち方だったらしい。
と書いていますので、そこから想像していただければと思います。
作者より