事務の仕事なら他の人たちと協力して何とかなるから、都合のいい時に時々病院で診てもらうといいと言われた。
課長は一人でもできるような仕事を僕に回して、散歩がてら人が少ない夜の工場の見回りでもすれば気分転換になるだろうという考えだった。
ただ、これも一応仕事だから、見回りのチェックと報告書を提出しないといけない。
工場は、1階のルームAとB、2階のルームCとDの、全部で4部屋ある。
ルームは廊下と壁で仕切られていて、壁の大きな窓でルームの中を見る事が出来る。
僕は窓の外から何か気が付いた事がないかを見回るといった、半ば警備員のような仕事をすればいい。
エレベーターで1階に降り、廊下を歩いてルームA、B、階段を上ってルームC,Dをそれぞれ窓から中を確認し、階段で3階の事務所に戻るというルートで、事務所でその日の報告書をまとめるというルーティーンを自分で決めた。
〇月〇日
10:00 ルームA 5人 異常なし
10:15 ルームB 6人 異常なし
10:40 ルームC 3人 異常なし
10:55 ルームD 6人 異常なし
11:05 事務所 異常なし
およそ2時間ごとに見て回ってこのような報告書を書くのだが、本当は人数は書く必要が無い。勤務表などでわかるからだ。
しかし課長は、僕が人数を間違える事が多いという事で、人数をしっかり数えられるようになれば治った事になると考えたようだ。
工場は夜は人が少ないと聞いていたが、昼とそう変わらない人数で稼働していた。
そんな夜勤の仕事を始めてから半月ほど経った頃、課長に呼び出された。
「君を信用して報告書をほとんど見てなかった。それは悪かった。しかし報告書を見てみたら気になる事があってな。」
「気になる事というと?」
僕がそう聞くと、課長は
「君が真面目に夜勤の見回りを2時間ごとにしていたのはよくわかった。監視カメラにも君がしっかり映ってたからな。」
「それでどこが気になるんでしょうか?」
「…そうだな、この時期は製品を減産すると君も知っているだろう?今、ルームCとDは夜は使ってないはずなんだ。」
「そんなはずは…。」
僕はルームCにもDにも人がいて灯も点いていたと反論しようとして、その時の様子を思い出していた。
言われてみれば、ルームCとDの従業員は動きが妙にゆっくりで、全員が背中をこちらに向けていてその表情が分からなかった。
「一度しばらく会社を休んで、しっかり治してからまた復帰したらどうか?」
僕は課長の提案を受け入れるしかなかった。
家に帰ってから母に
「しばらく会社を休む事になった。しっかり治してからまた働くよ。」
どうなったの?
コメントありがとうございます。
最初の方に
>もしプランターが無かったら、けがでは済まなかったような落ち方だったらしい。
と書いていますので、そこから想像していただければと思います。
作者より