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心霊

バクシマさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

理想の洗身
短編 2022/04/10 16:33 2,527view

頭のおかしい友人宅に泊まったときのことだ。
その日は二人で深夜までサシ飲みをした。
世間一般では、そういう場合風呂にも入らず寝ちまうものなのだが、俺は寝る前にどうしてもシャワーを浴びてサッパリしないと寝られない性質なものだから、友人にシャワーを使わせてもらうよう頼んだ。
付き合いが長いため、友人も俺の性質はよくわきまえており、快諾してくれた。
ありがたい。
ああ、最高の時間が始まる・・
脱衣して浴室に入り、48度の熱いシャワーを浴びる。
たまらねえぜ。乾燥肌にはこの温度じゃなきゃいけねえ。
肌を覆う埃や汗のベトベト、さらには皮脂の汚れを熱湯がこそぎ落とす。
かゆいところを掻いた時のあの快感が、熱湯により全身に駆け巡る。
肌に悪いって?そんな熱湯浴びてるからいつまでも乾燥肌なんだぞって?くだらん。人生のベスト5に入るこの快楽を捨てられるものか。むしろ熱湯により細胞が活性化して喜んどるわ。46度じゃいけない。47度はいますこし。48度だけがもたらす快楽だ。50度?そんな熱湯浴びたら火傷するぞ。
やれやれ。

生き返るぜ。
ふう。
さて、とりあえずボディソープを身体に塗り込んだら、そのまま頭を洗おう。流すときは全身まとめてだ。
ボディソープを全身に塗りたくり、次にシャンプーを適量取り、頭を洗う。
眼を瞑って
ゴシゴシゴシゴシゴシ
ゴシゴシゴシゴシ・・・
ああ、ボディソープとシャンプーの良い香りが浴室を満たす。俺はいま、最高に真人間だ。そんな気になる。
ん?
・・・はぇ?
洗髪する自分の指が、なにか違和感を探知する。
自分の指がその形状を捉えたときに、背筋が凍った。

人の手だ・・・
いつのまにか、
つめたく、細長い指が俺の髪をかき分けて頭皮にへばりついていたのだ。
当然友人ではない。この浴室には俺ひとりだ。
咄嗟に眼を開けて鏡を確認する。
「うわああああああ!!」
生気のない顔の女が俺を見下ろしていた。
俺はシャンプーやボディソープを洗い流すことなく、もんどりを打ちながら、転げるように浴室を飛び出した。
「おまえ何してんだ!身体流してから出てこいよ!」
床に泡を撒き散らしながら居間に現れた俺を見て友人が喚いた。
友人の言うことも、もっともだが、今はそれどころではない。
「女が!浴室に女が!」
俺が半泣きで訴えると友人が笑い出した。
「ああ、そうか。話してなかったな。あの幽霊はな、我が家のアメニティなんだ。」

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