霊との戦い at トイレ
投稿者:with (43)
短編
2022/03/03
21:41
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思わず瞬きの数が嵩み、ドアの下を見やるも先ほどの手は姿を眩ませている。
まさか心霊現象とでも言うのか?
これまでこのトイレを利用してそんな話は聞いたことがない。
俺は言い知れぬ不安と恐怖の念を振り払うようにけたたましい雄叫びを上げた。
「うおおおおおおお!」
気合いを入れ、霊を威嚇し、恐怖をも払拭する一石二鳥の雄叫び。
個室トイレから跳躍するように脱出し、直線的に手荒い場へ走り、押すと出るタイプの洗剤で手を洗い、トイレから飛び出る。
この間僅か二十秒余り。
勿論、全力で雄叫びを続けていた。
そのお陰で幽霊は近づけなかったのか、トイレを出るまで何もされなかった。
だが、別の問題に直面することとなった。
ゼミの教授が残念なものを見るような目を俺に向けたまま固まっている。
俺も全力の雄叫びを聞かれていた羞恥心から顔を赤くさせた。
「……トイレは静かに使うように」
「……はい、すみません」
そして、俺達は互いに会釈を交わし、入れ違うようにその場を後にするのだった。
後日、同じゼミの友人から、昨日教授が雄叫びを上げながらトイレから出てきたのを見掛けたと聞いた時は笑った。
たぶん、俺と同じ体験をしたのだろう。
その噂が流れる頃には不思議と教授と日常会話を交わす仲になったのはいい思い出だ。
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勢いのある怖い話すきw
ちゃんと手を石鹸で洗ってて、偉い!
ちゃんと手を洗ってる!!