てんぐのちご
投稿者:誠二 (20)
おじさんが鋭い眼光で威圧すると、男の子は諦めたように肩を落とし、歩いて戻っていきました。
男の子と手を繋いで帰る寸前、おじさんがぎょろりと俺を見下ろしました。
「名は?」
「椿……」
「またおなごか。とんとおのこが生まれんな」
自分が責められているようでなんだかひどく居心地が悪くなりました。
その後俺は小学校に上がり女装から解放され、やがて村の外の高校に通うようになり、幼い頃の不思議な体験をすっかり忘れてしまいました。
ある時高校で知り合った友人が、夏休みに俺の家に遊びにきたいと言い出します。
その友人は貧しい母子家庭で暮らしており、朝から晩まで働き詰めの母親に負担がかかるのを避けるため、まだ5歳の弟も連れてきたいと申し出ました。
「オーケー、わかった」
ところが……この判断が誤りだったのです。
夏休みの一週目に村に来た友人や弟とは色んなことをして遊びました。
既に祖母は他界しており、父親は仕事で家を空けることが多いので、夜更かしして騒いでいても注意される心配はありません。
対戦ゲームやトランプや映画鑑賞など、ひと通りのノルマを消化したあとは布団に並んで寝転がり、他愛ないお喋りに耽りました。
俺がうちの村の奇妙な風習を話すと、友人は盛大に驚いていました。
「へー、男の子に女装させるのか。なんで?」
「さあ?しらね」
「逆ならまだ変質者対策でわかるけどさ~。タカシは大丈夫かな?」
「数日滞在するだけならかまわないよ、無理矢理スカートはかせんのも可哀想だし」
子供の頃の苦い体験を思い返して呟けば、友人の弟のタカシは露骨にホッとしていました。
「よかった~、ぼくスカートなんてはきたくないもん」
ところが翌日……俺と友人が目を覚ますと、真ん中の布団からタカシが消えていました。
家中名前を呼んで走り回っても姿は見当たらず、近所を草の根さがしても無駄ときて、遂には村の青年団が出動する大騒ぎになりました。
「一体どこ行っちまったんだ。まさか……」
「心当たりがあるのか?」
凄まじい剣幕で友人に詰め寄られ、自分でも半信半疑なまま不思議な男の子と神社で遊んだ事を話しました。
タカシはあそこにいるかもしれない……そんな直感に駆り立てられて夕暮れの境内に赴き、衝撃に言葉を失いました。
境内の中央にたたずんでいるのは十年前のまま、何も変わってないあの男の子でした。
「タカシ!」
男の子の隣には虚ろな目をしたタカシがおり、二人で手を繋いでいます。
弟を取り返そうと男の子に殴りかかった友人が強風に吹っ飛ばされ、派手に転がりました。
天狗の言い伝えってなると大体あの辺りかな?っていう地方が推察できたりするのがロマン
面白かったです
天狗って男の子が好きなのかな。
良かったです。
どこか切なさも感じる話
読み応えありました
ジャニー