串刺し村にて
投稿者:誠二 (20)
俺の祖父は有名な拝み屋でした。そのせいか親父と俺にも霊感が遺伝し、子供の頃から日常的に幽霊や妖怪っぽいものを見てきました。
大学卒業後はしばらくフリーターをしながら祖父を手伝い、生計を立てていた時期もあります。
とはいっても本格的な修行はしてないので、荷物運びを兼ねた雑用係のようなものですが……祖父の霊能力は本物みたいで、日本全国から霊障に悩んでいる依頼人が殺到しました。
そんなある日、祖父が突然言い放ちました。
「今回の依頼は厄介そうだからお前も連れてく」
「俺が?足手まといになるんじゃないの」
「人手は少しでも多い方がいい。お前もワシの血が流れとるんじゃ、予備戦力程度にはなるじゃろ」
祖父の発言に少々ひっかかるものを感じましたが、高額のお小遣いに釣られてOKしました。
翌日、俺と祖父は親父に留守を任せて新幹線に乗り込み東北の田舎に赴きました。駅前で俺たちを出迎えてくれたのは麦わら帽子を被った農家の老夫婦で、そこから軽トラに移って山道を一時間ほど登り、目的地の集落をめざします。
道中いやに気になったのは、山道の至る所に点在する得体の知れないオブジェでした。
「すいません、あれなんですか」
「串刺しですよ」
ハンドルを回す老人がおっとりと答えます。
道端には無数の木の棒が立ち、その先端に布製の人形が突き刺さっているので串刺しなのは間違いないですが、わからないのは目的です。百舌の早贄の見立てのような光景に困惑していると、隣の祖父がぼそりと呟きました。
「黙ってろ。じきにわかる」
老夫婦に案内された村には三十戸ほどの民家がありました。住民の大半は八十をこえている高齢者です。
「遠路はるばるよくきてくださった」
「ほんにほんに」
トラックから降り立った途端俺たちを取り囲み、大袈裟なほど歓待する村人たちに戸惑いました。中には涙ぐんでいる老婆もいます。
さらに俺の目を奪ったのは、村中至る所に存在する百舌の早贄もどきのオブジェです。
近付いてよくよく観察してみた所、腹を貫かれた人形の中身は米粒であり、棒の周囲に散らばったそれを小鳥たちが啄んでいました。
俺たちが通されたのは村はずれの寺のお堂でした。そこで初めて奇妙な依頼の全容を知らされます。
「ここは串刺し村なのですじゃ」
「串刺し村?」
「明治の世に入り櫛崎村と改められましたが、誰もその名では呼びませぬ。不名誉なあだ名じゃが仕方ない、全ては過去の惨劇に起因するのです」
村の長老から聞かされたのは、串刺し村の名前の由来となった二百年前の悲劇でした。
当時この村を大変な飢饉が多い、多数の犠牲者がでました。
しかし村人たちが飢餓に苦しんでいる中、欲深な庄屋が食料の独占に走り、蔵に大量の米を貯め込みます。
怒り狂った百姓たちが直訴すれば、庄屋は堂々と開き直って言いました。
「米など隠しておらん!食べてもおらん!疑うなら俺の腹を裂いて中を見るがいい!」
けいとらに よにんは むずかしい んじゃないでしょうか?
おいくらぐらい もらへたのかが きになります。
じゃ って話す人をいまだに見たことがない