職場に現れる見知らぬ女性の意外な正体

以前働いていた職場の同僚に、自称霊感持ちの智香（仮名）さんという女性がいました。

その人がある日いきなり、「ねぇ、1週間前から知らない同僚が増えてない？」と、言い出しました。

智香さんが言うには、私達の部署には男女合わせて15人しかいないし、全員の顔を知っているのに、ふとした瞬間に知らない顔の女性が1人、増えているんだそうです。

私も他の同僚も、見知らぬもう1人の同僚なんて見たことがないので、智香さんのたちの悪い嘘だと思っていました。

しかし、智香さんの話しの後から、他部署の人から「1人新しく女性社員入れたの？」と言われたり、忘年会を15人で予約したのにお店に行ったらもう1人分のおしぼりとお水を出されるなど、不気味な出来事が起こるようになったのです。

皆、見知らぬもう1人の女性社員の顔を思い出そうとしても、靄がかかっているようでハッキリと顔を思い出せません。

同僚達はすっかり怖がって、休む人も出てきてしまいました。

そこで上司が更に上に掛け合って、お祓いをすることになったのです。

お祓いをした後は、もう1人のいるはずのない女性が現れることはなくなったようで、そんなこと少しずつ私達の記憶から消えていきました。

次にそれを思い出したのは、私が職場を辞めて2年経った頃、道端で偶然、智香さんに会った時です。

話の流れでお茶することになったのですが、智香さんが、「実はあの時、誰にも言えなかったんでけど、あの見知らぬ女性が誰か、私知ってるんだよね」と言い出したのです。

智香さんは10年以上勤めているお局さんで、見知らぬ女性は同期だったそうです。

その女性は私達の部署の上司と不倫関係にあり、妊娠したことがきっかけで仕事を辞めたのでした。

智香さんの話しでは、上司は子供を認知しなかったので1人で育てていたようですが、職場で女性を見かけるようになった頃、生活苦で子供と心中したんだそうです。

「きっと、無念な気持ちから、上司のいるあの職場に出たんだろうね。上司はお祓いからしばらくした後、仕事を辞めたじゃない？どうやら精神的に病んで、今は家に引きこもってるんだって。外に出ると知らない女がついてくるって、発狂するみたい」

上司が病んだのは、智香さんと同じように見知らぬ女性の正体に気づいたからかもしれません。

そして、あの女性は今も上司を許しておらず、傍に憑いているのでしょう。