廃屋で見つけた「みいちゃんのアルバム」
投稿者:with (43)
「うわー、すげえガラクタばっか」
散らばった生活用具に剝がされた壁紙、埃の塊やガラス片の屑などとにかく足の踏み場がないほど床面はゴミが散乱している状態で、空気もどことなく嫌な臭いがする。
玄関口正面には二階へ上がる階段があり、右手には恐らくリビングへ続く入口がある。ドアは蝶番が壊れていて斜めにお辞儀していた。
Bが先導して敷居を跨ぎ、まずはリビングを覗くことにした。
「なんか夜逃げみてえだな」
Aが埃で咳き込みながら呟く。
ライトを当てて室内を見渡せば、ソファや食器棚といった家具はもちろん、倒れた観葉植物や泥まみれのカーペットがそのままあることから、本当に突然住人が消えたという印象が強い。
食器棚の量から見て4人家族くらいが住んでいたのだろうか。
俺はうさぎの絵柄の入った子供用のコップを見つけてそう考えた。
一階の間取りはそこそこ広いらしく、リビングの他にも部屋は何個かあるようだ。
俺達は二手に別れて何か珍しいものがないか探索する事にした。
まるで空き巣になった気分だが、事実住居侵入しているのでそうなのかもしれない。
ちょっと酔っぱらい気味のAと怖がりのCが一階の捜索、俺とBが二階へ上がる。
「この階段大丈夫か?音やべーよ」
「これで崩れて怪我したら事故物件やな」
Bがしょうもない事を言ったので俺は無視して二階廊下を照らして間取りを確認する。
ドアの数は三つあり、一つは突き当りにあるからトイレだろうか。
先ず突き当りのドアを開けると案の定トイレだった。
「うわ、きたね」
思わず感想がこぼれるほど酷く汚れた便器があり、窓は割られ、壁にはスプレーで落書きがされていた。
すぐ隣でBがドアを開けた音がしたので振り返り、Bが開けた部屋を背中越しで覗いた。
「こっちも散らかってんな」
まるで地震が起きた直後のように倒れた本棚と散らばる本。
夫婦の寝室だろうか、古びたベッドが二つ置いてあるが、マットレスは穴が開いて中のスプリングが露出していて、誰かが土足で上がったのか靴跡もある。
「高そうなのに勿体ねえな」
Bの感想に納得しつつ俺も室内を物色し始めた。
勿論、金銭類じゃなく、話のネタになるようなモノをだ。
壁際に置いてある木製の収納棚の引き出しの扉は破壊されて中身が見えていたので、中にあったファイルを手に取って開いてみた。
「アルバム?」
俺が呟くとBが「お?なになに」と興味深そうにライトを翳して一緒に覗き込む。
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