祖母の家の話です。
当時小学生だった私は夏休みに妹と二人で泊まりに行きました。
畳の部屋をふすまで二つに仕切っただけの間取りでした。
蒸し暑い夏だったため、ふすまを開けてエアコンを付けていました。
その日は夕食後に花火をしてくたくたでした。遊び疲れて、十時ごろには寝床に入りました。
祖母は右側の部屋、私と妹は左の部屋を使いました。ふすまは開けたままです。
夜中、祖母のいびきで目を覚ましました。
部屋の中が暗く、何も見えませんでした。
目が慣れていくうちに、ぼんやりと天井が見えました
ふと足元を見ると何かがふわふわと浮いていました。
何だろうと思い、じーっと観察しました。
人の首でした。
眼鏡をかけた四十から五十代くらいのおばさんの顔が見えました。
恐怖で声も出ません。
祖母はいびきをかいて寝ています。
隣で寝ている妹も寝息を立てて寝ています。
頭の中が真っ白になりました。
早く消えて、と必死で願いました。
すると、眼鏡のおばさんと目が合いました。
ヤバい、と思いました。
しかし、おばさんはすぐに目をそらし、スーッと通り過ぎていきました。
その後、何も現れず、気が付けば朝になっていました。
祖母に夜中に見た話をしても信じてくれません。
あれは夢だったと思い、忘れることにしました。
それから数年後、祖母の家で昔見たおばさんのことを思い出して、その場にいた伯父に話しました。
すると、伯父も見たことがあると答えました。
伯父も子どものころから、この家で奇妙な体験を何度かしていたそうです。
詳しく話を聞いてみると、私と妹の寝ていた部屋は幽霊の通り道だったらしい。
何年も前に亡くなった、認知症だった祖父もおかしなことを言っていました。
「小さな女の子がおった」
認知症のせいなのか、本当に見たのか……
今となっては分かりません。
そういえば眼鏡をかけた幽霊って初めて聞いたかも