かごめかごめ
投稿者:壇希 (11)
私の祖母が死にました。
祖母は東京から遠く離れた山間の小さな村に住んでいました。私は小さいときに数度行っただけでよく覚えていませんが、陰気な雰囲気の漂う不気味な所だったと思います。
祖母の住む家は大きな旧家で、そこにもいい印象はありません。私の家族は、私が小さいときにあることがあってから祖母とは疎遠になってましたので、私がこの家に来るのは、実に二十年ぶりのことでした。
祖父を戦争で亡くし、一人娘の母が嫁いでからは祖母はこの広い家で一人で暮らしていました。家の中は私が記憶しているよりもさらに薄暗く、陰気でじめじめとしていました。
一緒に来ていた母は、祖母の顔を一目見ると予約していた街のホテルに早々に引き上げていきました。
私は家の番や葬儀の段取りなどを、半ば強制手的にやらされることになりました。母もあまりここに長居したくないのでしょう。
葬儀屋も手短に打ち合わせを済ませ、明日の朝来ると言い残し、帰って行ってしまいました。
時刻はまだ昼過ぎです。私はこの不気味な旧家に、一人取り残されてしまいました。
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日が沈み月明かりもない八時ごろ、近所の人たちが連れ立って弔問に訪れました。
しかし、皆なぜか中に入ろうとせず、玄関先で黙って手を合わせるのみです。
村の雰囲気にふさわしく、陰気な人たちでした。誰も何も言葉を交わさず、黙って俯き手を合わせています。
この村の風習なのか、白無垢の綿帽子のような黒い被り物を男も女も深く被っているため、誰一人として表情が読めません。
近所の人たちは五分ほど手を合わせると、何も言わずに帰って行きました。
その際も、会話はおろか帰る足音すら聞こえません。私は腹の底がゾッと冷えるのを感じました。
それからしばらくすると、お坊さんがやってきました。
この人は何も被っていなかったのですが、全くの無表情でやはり何も言わず、仏間の祖母のもとへスタスタと歩み寄ると、私の出したお茶には目もくれず、聞いたこともないお経を唱え始めました。
私はお坊さんの後ろに正座をしていたのですが、不思議とお経を聞いていると猛烈な睡魔が襲ってくるのです。
何度も抗おうと足をつねったりしたのですが、その異常な眠気は衰えず、いつの間にか私の意識は途切れてしまいました。
ジリリリリリ。
突然鳴り響いた黒電話の音に、私は飛び起きました。慌てて周りを見たのですが、部屋には祖母の遺体と私以外誰もいません。
お坊さんはいつの間にか帰ってしまったのでしょうか?
黒電話の音はなおも廊下から響いています。私は立ち上がり痺れる足を引きずりながら電話機へと急ぎました。
今時見ないような古めかしい黒電話が、廊下の薄暗いオレンジの灯りを受け黒光りしています。それは仏間の襖を開けたすぐの所にありました。
受話器を取り上げると、煩いベルの音は止みました。私はそっと、それを耳に押し当てました。
かごめかごめ、籠の中の鳥は、いついつ出やる……。
こわ