かごめかごめ
投稿者:壇希 (11)
受話器の向こう側では、かごめの歌を小さな女の子がか細い声で歌っていました。
私が何を聞いても女の子は歌い続けます。それは悲しく暗い歌声でした。
女の子が歌い終えると電話は切れました。
その瞬間、背後の仏間でズリリと何かを引きずる音がしたのです。
うしろの正面だあれ? 女の子の歌っていた最後のフレーズを思い出した私は、急に怖くなり、慌てて背後を確認しました。
そこにはもちろん誰もいません。物言わぬ祖母が寝ているだけです。
私は仏間に戻り、祖母の様子を確認しました。途端に悲鳴を上げ、腰が抜けてへたり込んでしまいました。
布団に寝ている祖母。その顔には白い布が掛けられています。
その布の両目と口の部分に、赤い血が滲んでいたのです。
私は上を見ましたが、そのような液体はありません。明らかに祖母の内側から溢れ出ているのです。
不意に天井付近で物音がしました。見上げると、壁に掛けられた先祖の遺影の一つが、カタカタと揺れています。
それは、顔も見たことのない祖父のものでした。
遺影の揺れ方はどんどん大きくなります。それはまるで、ここから逃げ出そうとしているようでした。
上を見上げていた私の眼下で何かが動きました。私は視線を落とし、絶叫しました。
祖母が上半身を起こしていたのです。
その顔には白い布が付いたままでした。おそらく血で張り付いているのでしょう。
私は視線を祖母から離せなくなりましたが、何とか後退りし廊下との境目まで移動しました。
すると、玄関の引き戸がバアンと開け放たれ、何者かが腰の抜けた私のもとへと駆け寄ってきたのです。
背後に立ったその人を、私は見上げました。
そこには影が立っていました。目も鼻も口も見えない、全身真っ黒の影です。
その影は腰を落とし、私に言いました。
「夜はこれからだよぉ」
こわ