二十五年ほど前の夏、私は友人と一緒に、長野県のある観光地へリゾートバイト(住み込みのアルバイト)に行きました。
そこは山の上にある大きな二階建ての食堂で、裏手には、離れのような形で従業員用の寮が建っていました。
私と友人はホール係、先に働きに来ていた男の子は厨房係で、年齢が近かったこともありすぐに打ち解け、三人で行動することが多くなりました。
建物の目の前の広い駐車場を抜けると、なだらかな坂道があり、そこを五分ほど登ると山頂に出ました。
とはいえ、そこは木もほとんど生えておらず、広場か空き地のような場所になっていて、ベンチ代わりになる大きな岩がいくつか点々と置かれていました。
そして周囲の山々をぐるりと見渡すことができ、昼間は観光客のハイキングコースにもなっている場所でした。
私たちは雨や霧の日を除いて、仕事終わりや、酔っ払った深夜にもよくそこへ行き、岩に腰かけて深呼吸をしたり、くだらない話をして笑ったりしていました。
そんなある日、仕事が終わった夕方五時半ごろのことです。
いつものように三人で山頂へ行きました。
私たち以外には誰もおらず、がらんとした山頂で岩に腰かけ、その日来た客の話や将来のことなどを話していました。
十分ほど経ったころ、友人が「そろそろ戻ろう」と立ち上がりました。
ですが私は、なぜかもう少しそこにいたい気分だったので、
「先に帰ってて。もう少しいる」
と言うと、二人は
「なに、たそがれるのかい(笑)?」
「じゃあご飯用意しておくよ。気をつけてね」
などと言って、先に戻っていきました。
二人の話し声が遠ざかり、やがて完全に聞こえなくなると、一気に静かになりました。
虫の羽音や草の揺れる音だけが小さく聞こえ、山頂特有の、耳が詰まるような感覚でした。
そこで目を閉じて耳抜きをしながら、ゆっくりと目を開けると、思わず息をのむような夕焼けが広がっていました。
全体的に蛍光がかったピンク色の空を、濃いオレンジと紫色の雲が迷彩柄のように埋め、その隙間から差し込む金色の光が、スポットライトのように山々を照らしていました。
それはもう、きれいというよりどこか異様な光景で、私は吸い込まれるように見入っていました。ですがふとお尻の痛みが気になって、立ち上がった、その瞬間でした。
まるでブレーカーが落ちたように、突然あたりが真っ暗になったのです。
空にはもう、さっきまでの夕焼けはなく、代わりに妙な湿気だけがまとわりつくように感じられました。
あまりの唐突さに驚きながらも、
(山ではこういうこともあるのかな)
(それにしても、ものすごい夕焼けだったな)
などと考えながら、私はそろそろ戻ることにしました。
坂道を下っていくと、駐車場の向こうにある食堂の明かりが、妙に際立って見えました。























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