大学生になったばかりの頃に、ひどく恐ろしい体験をしたので、
罪滅ぼしも兼ねて、そのことをここに吐露しておこうと思う。
大学入学が決まってすぐ、学校近くに安いアパートを借りた。
ひとり暮らしの新生活だったが、とにかく安い物件を探し、
たどり着いたのが家賃1万2000円のオンボロアパートだった。
3年後には取り壊す予定だというので、自分としては卒業するのと同時だし、
なんら困ることはないのでそこに決めた。
敷金礼金なし。風呂なし、キッチン・トイレ共同。
木造モルタル二階建て。
かなりアレだが、食事はほとんど学校か、コンビニで十分だし、風呂も学校にシャワーがあるのでそれを使えるし、当時はまだ銭湯も近所にあったので何の問題もなかった。
引っ越しを終えたその日。はじめての一人暮らしの夜。
布団に潜り込んで、さて寝ようかと思っていると、隣から赤ちゃんの泣き声がする。
夜泣きと言う奴だ。
赤ちゃんは泣くものだ、というのは知っているし、赤ん坊に罪が無いのも知っている。
だが、こちらは眠れないストレスでイラだって、つい壁ドンをしてしまった。
しばらくすると赤子の声は泣き止んだ。
次の日の朝、ゴミ出ししていると隣の住人もドアから顔を出してきた。
昨日の一件もあり、ちょっと気まずいが挨拶した。
隣の住人は中年の女で、なにか病的に痩せていて、頬はコケ、目の周りにはクマ、
長い黒髪をざんばらにして、なんとも不健康そうな女だった。
こんなおばさんが育児をしているのか・・・。
旦那はいるんだろうか・・・こんな6畳一間の安アパートに、
子連れで住んでいるなんてあまりに息苦しくないか?
余計な詮索なのはわかっているが、なんだかそう考えるとだんだん女が哀れにも思えてきた。
すると女の方から声をかけてきた。
「あの・・・赤ちゃんの泣き声・・・」
ボクは慌てた。壁ドンの一件があったからだ。
「あぁ、あの、すいません。赤ちゃんって泣くもんですよね。ボクもそんなことで壁ドンなんかして悪かったなと反省してます。ごめんなさい」
そう一通り謝って、ボクはそそくさとそのまま学校へ向かった。後ろは振り返らなかったが、
女がずっとこっちの背中を見ているような、そんな視線を感じていた。
























Manaです。ずいぶん前に書いた「アパートの赤子」というショート作品を、加筆修正して再度アップしました。
実は前回とは大幅に内容を入れ替え、まったく違う話になっていますので、加筆修正というよりはほぼ新作です。まぁ胸クソ系かもしれません。
自分、よく言われるんです。泣ける話から胸糞な話、名作からゴミみたいな話まで「振り幅」が大きいと。まぁでも、おもしろいでしょ?感動系かなぁと油断して読んでたら突然胸糞だったり、胸糞かなぁとおもってドキドキしてたらすごい感動系で泣けたとか。最後まで油断できないでしょw
作者は二重人格なんだと思ってください(笑)