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心霊

大鷹恵さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

印刷工場の清掃
短編 2025/09/11 06:11 869view

これは地方の印刷工場に勤務していた馬鹿山葛生と言う男性が体験した話だ。印刷工場ではお盆前に社長の命令で社員たちで清掃するのが習慣になっていた。馬鹿山は暑い中、工場の清掃活動していた。馬鹿山からしてみれば、
「なんで、薄給でサビ残で働かされているこの俺がこんなことしなきゃならんのだ」
と文句たれていた。それに馬鹿山は工場清掃の日に有休で休みを取っている社員や馬鹿山が死ぬほど嫌っているパワハラ上司、社長に対しての怒りが隠せなかった。そんな事を考えながら、工場にある今は使われていない倉庫の前に立っていた。社長からは
「ここの倉庫は危険だから、入らないように」
と言われていたのだ。馬鹿山は
「工場にいるのは俺しかいないのだから、入ってみるか」
と倉庫に入った。倉庫は暗かった。馬鹿山はライターの火をつけ、倉庫内を見回す。倉庫内にはガラクタでいっぱいであった。
「何もないじゃないか・・・」
馬鹿山は倉庫から出ると工場内の清掃に戻った。数時間後、工場内の清掃を終えた馬鹿山は工場を施錠する時、例の倉庫から

「もういいかい?」
という女の子の声を聞いた。
「そんな馬鹿な工場にいるのはこの俺だけだぞ・・・」
馬鹿山は恐る恐る倉庫のドアを開け、倉庫の中を調べる。誰もいなかった。
「多分、俺の気のせいか・・・」
馬鹿山はそう呟き、倉庫から出て、工場の施錠を終えると馬鹿山の愛車であるライトグリーンのカワサキ・AR50にまたがり、猛スピードで工場を後にした。

その日の夜、有休をとって休んでいる同僚に清掃中に起こった事を電話で話した。同僚は
「俺たちが勤務している印刷工場は昔、大量の鼠が住み着いていたんだ。前の社長は経費をケチって駆除業者なんて呼ばず、社員たちで鼠の駆除を行ったんだけど、例の倉庫で社長が運悪くギックリ腰になったところを大量の鼠に食い殺されたんだ。ちなみに社員たちは鼠に食い殺される社長を見て、ガッツポーズを決めていたんだがね。まるでスティーブン・キングの短編集「深夜勤務」にある「地下室の悪夢」みたいにな。後で分かったところ、例の倉庫には地下室に通じる道があるんだ。今はコンクリートで固めて、地下室に入れないようにしているんだけど、ここだけの話、地下室を封鎖した理由は地下室から「もういいかい?」という女の子の声が聞こえるからなんだそうだ」
と馬鹿山に話した。お盆が終わり数日後、例の倉庫にて馬鹿山が死ぬほど嫌っているパラハラ上司が大量の鼠に食い殺されているのを発見された。あの忌々しいパワハラ上司が死んだことに大喜びした馬鹿山はすぐさま印刷工場を辞め、給料や福利厚生がきいている大手の印刷会社に転職したそうである

終わり

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