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妖怪・風習・伝奇

大鷹恵さんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

日本テレネットに現れる「笑い女」
短編 2025/10/09 00:13 934view

これは和歌山県すさみ町でゆっくり動画制作会社を経営しているA村さんが主宰するシナリオ制作に関してのワークショップで起こった話である。A村さんは生徒たちが製作したシナリオを見て、
「お前らの「スカッとする話」シナリオ、マジで最高の出来だわ!電動ドリルで汚嫁の頭をドリドリしたり、間男をピッケルでぶっ殺した後、間男の死体を硫酸で溶かすところとか。有害な健康食品やファイザーのコロナワクチン「もどき」の毒薬を売りさばく泥ママを薬剤師のイッチが森田童子のレコードで泥ママを首チョンパしたり、来店拒否しやがった寿司屋の職人をガソリン撒いて店や職人ごと放火したり、学校のいじめっ子共を頸椎、脊髄、内臓、脾臓、心臓破裂するまで暴力ふるって病院送りにしたり、アニヲタであるイッチを愚弄する毒親を始末する為、幼稚園児にお菓子とジュースを渡して、毒親を殺害するように仕向けたり・・・とても素晴らしい、「スカッとする話」は日頃のうっ憤を晴らすためのヴィジランテポルノなのだ。後、ゆっくり解説に出てくる霊夢と魔理沙の設定なんやけど、別に無理しなくても原作準拠してくてもええ、誰も気にしてなさそうだし。お前らが好きに霊夢と魔理沙の設定を自分好みにカスタマイズしていいんや」
A村さんは一息つくと、ある話を始めた。

A村さんは昔、今は無きゲーム制作会社「日本テレネット」に一時期、勤務していた事があった。「日本テレネット」はPCエンジンやメガドライブ、PC、SFCを拠点にゲーム性は駄目でヴィジュアルシーンだけは良かったゲームソフトを開発及び発売していた会社であった。なお、会社が末期の状態になると「ヴァリス」「アークス」「シルキーリップ」のエロゲを発売して、往年のファンを大激怒させていた(そして、そのまま「日本テレネット」は倒産した)。「日本テレネット」でゲーム制作をしている時、同僚から肩を叩かれた。
「なぁ?A村。また、社内に「笑い女」が現れたらしいぜ」
A村さんは同僚の発言に肩をすくめる。「笑い女」とは昔から「日本テレネット」の社内に潜んでいる妖怪みたいなものである。ある噂では「笑い女」は死神で「笑い女」を見た物は数日後に亡くなる、という噂もあった。
「ま、「日本テレネット」自体、納期(製作期間)の問題上、社長が開発現場を見ていないのか超がつくほどの激務の連続なんだから、毎日のデスマーチで過労死寸前の頂点に達した時に見えるんだろうな・・・」
「はははッ、貧乏暇なしのA村なら死神がもう見えるトランス状態になっているわけだな。それとA村。俺はここから独立するグループの連中と合流して、この会社から離れるけど、お前はどうする?出来たらA村、新しく立ち上げる会社に来てもらいたいんだ」
そもそも「日本テレネット」の衰退の原因はワンマン社長の開発現場を無視した経営による開発環境の悪化と前述の無理な製作期間と有能なスタッフが次々と独立したことが原因であった。

「いや、俺は別のゲーム会社からスカウトが来ているからいいよ。大体、俺が色んなメーカーの奴らとは交友を深めているのは知っているだろ?後、数週間後にはどこの会社にも縛られないフリーのプログラマー様よ。もっとも俺はメガCDの「アネット再び」をテストプレイして、「これのどこが、ベルスクの元祖「ダブルドラゴン」、ベルスクの代名詞「ファイナルファイト」やセガさんがメガドライブで出している「ベア・ナックル」のような今話題のベルスクやねん!?ベルスクは2Pでのプレイ出来ることが前提だと思っているのが俺の持論なんだが、1Pのみじゃだめだろ!?アネットだけじゃなく、冒険家のアーネスト・エバンスも出てるんやし。2Pプレイできるやろ!?」と憤ったけどな、はははッ。それとメガCD版「ファイナルファイト」と発売が被ってしまったのか、歴然の差があったワケだが・・・」
「そうか、お前、入社してからかなり頑張ってたもんな。A村の腕前なら他のゲーム会社でもめきめき頭角合わせれるねん。お前、シナリオのセンスもあるし」
「元々、俺が「日本テレネット」に入社したのは「シナリオライター(プランナー)募集」の広告を見たからなぁ。結局はプログラムの方が不足していたから、そっちに回されたけどな。でも「夢幻戦士ヴァリス」の大ヒットした時は凄かったなぁ、OVA「レダ」のパクリやけど。ファミコン版のテレビCMなんて監督したのはガイナックスの庵野秀明やで。ここんところ、「夢幻戦士ヴァリス」のような人気作品出てないな」
A村さん、そう言い終えると後ろを振り向いた。

そこに「笑い女」が立っていた。「笑い女」はA村さんに「バイバイ」する仕草をして去っていった。この時、A村さんはこう思った。
「そうか、「笑い女」も俺と同じく「日本テレネット」を離れるんやな。「笑い女」は結局、死神じゃなくて、ゲーム業界の座敷童子だったんだな」

A村さんは「日本テレネット」で起こった話を言い終える。ワークショップに参加していた私は窓の方を見ていた。窓を見た私は腰を抜かす。そこには大量の「笑い女」が窓一面に張り付いていたのだ。この時、私は思った。今いる「笑い女」たちはゲーム会社という自分たちの棲家を失いさまよっているのだ。そして、ホームレス状態の「笑い女」たちはワークショップに参加している「ゆっくり解説」や「スカッとする話」の動画制作者の所を自分たちの新たな棲家にするんだろう。

願わくば多くのクリエイターに「笑い女」がくれる幸福があらんことを。

終わり

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