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呪い・祟り

大鷹恵さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

てっぐ様の祟りに触れた者の末路
短編 2025/10/11 09:31 626view

私の実家がある地域は昔から天狗信仰が盛んな所であった。かれこれ、数年前になるだろう、私の親友にヤラ・ナイコという女性がいた。ナイコはこの地域の大地主であった。ナイコは両親や親族を早くになくしており、天涯孤独の状態であった。ただ、ナイコは「もし、自分に何かがあったら」の時の為に早い段階から遺言書を製作していたのだ。私やガールフレンドのネルも遺言書の製作に立ち会ったことがあるからだ。そのナイコが泥ママと泥子が二人乗りするカワサキ・750ターボ(いわずがもな、泥ママが人様から盗んだモノである)の交通事故に巻き込まれて死亡し、大雪が降る中、葬式に参列した時のことであった。私やネルはナイコの葬式に参加した。葬式に参列していた近隣住民は
「こりゃ、てっぐ様の祟りじゃあ」
と言っていた。私は事情を聞いてみると、この地域は天狗様が信仰の対象であり、住民たちは天狗様を敬っていた。そんな地域に東京から来たヴェンの嫁がこの地域に住み着き始めてから怪異が起こるようになったのだという。ヴェンは古くからこの地域に住んでいる印刷工場で働く青年だ。ヴェンの嫁というのが地域の天狗信仰をバカにしている節があるらしく、
「天狗なんて入るわけねーだろ!これだからドン百姓は」
とほざいていた。ヴェンは
「あんま、そんな事、言わん方がいいっス。てっぐ様の祟りは怖いからやめた方がいいっス」
と嫁をなだめた。さて、この地域の神社で天狗様の為のお祭りがあり、その祭りでも礼儀知らずのヴェンの糞嫁は屋台に売られている焼きソバなどを無線飲食し、酒を飲んで大暴れした。そして、天狗様の恰好した地元住民を殴り飛ばし、神社あったものを手あたり次第破壊したという。私は
「あれ?ヴェンは?暴走機関車と化した糞嫁を止められるのはヴェンしかいないのに」
と質問する。それを察してか

「それがヴェンの奴、あの糞嫁が嫁いでから、全然、俺たちの前に姿を見せないんだ・・・。いや、ヴェンの母ちゃんもか。俺はあの糞嫁に聞いたところ、今、旦那は名古屋に単身赴任でトメはそのまま、旦那について行っている、なんて言っていた。印刷工場の奴らに聞いたが、ヴェンはここの所、無断欠勤をしていると言っていた。ヴェンを見なくなった辺りから、あの糞嫁はヴェンの家の財産を散在し始めたんだ」
と近隣住民は答える。

これは私の憶測であるが、ヴェンとその母親は恐らく、あの糞嫁に殺害されているだろう、糞嫁がヴェンとその母親を殺害する動機は財産目当てである、と私は思った。そして、糞嫁の行動のせいでヴェンの家は事実上の村八分であったという。そして、予定調和の如く、天狗様の祟りで糞嫁に天罰が下るはずだった・・・。ところが祭での大暴れの後、この地域の大地主の一族(ヴェンの糞嫁・・・いや、ヴェン一家とは全く無関係、つまり赤の他人である。そもそも、ナイコはヴェンやその母親とは全く関りがないのだ)の方に厄災が降りかかったのだ。ちなみにヴェンの糞嫁は東京の実家に帰っていたという。それからのことは全く分からないのだという(近隣住民からしてみればあの糞嫁とは関わり合いを持ちたくないのが現状なのだが)。近隣住民曰く
「ヤラ・ナイコはてっぐ様の祟りで死んだんだよ。そうに違いねぇ」
と言っていたのだ。そもそも、祭や神社の物を滅茶苦茶に破壊したヴェンの糞嫁でなく、ヤラ・ナイコに天狗様の祟り(厄災)が降りかかったのは未だに謎である。外を見渡すと大雪が降り続けていた。私は
「スタッドレスタイヤにしといて正解だったな」
と呟く。

葬式が終わった後、私とネルは「もう誰もいなくなってしまった」ヤラ・ナイコの自宅にて、相続財産管理人の男性からナイコの遺産の件を相談された。相続財産管理人は
「長い間、大地主一族の相続財産管理を務めていましたが、この遺言書はいくらなんでもありえないんですよ」

と青ざめていた。ヤラ・ナイコ本人が製作した遺言書には
「ヤラ・ナイコの全財産はヴェンの糞嫁に譲る」
と書かれていたのだ。ちなみに遺言書に関してはナイコが直接、相続財産管理人に渡したものだ。ちなみにその時も私やネルも立会人として参加している。私の憶測では偽造した遺言書を誰かが何処かですり替えた可能性がある。そこで私たちは葬式が終わった後、ネルが運転する赤いマツダ・ファミリア(BD型)の3ドアハッチバックでヴェンの自宅へと向かう。ペーパードライバーの私はそちらに向かう道中、先日、ブックオフで購入していたミッキー・スピレインのハードボイルド小説「裁くのは俺だ」を読む。相続財産管理人の男性は外を眺めながら
「まだ昼ごはんを食べていなかったな・・・」
と愚痴るのであった。なお、ファミリアのトランクには庭の穴掘りに使用するスコップが三本事前に準備していた。

そして、私、ネル、相続財産管理人がヴェンの自宅の庭を調べた所、二人の死体が発見された。死体はおそらく、ヴェンと母親で間違いない。ネルは
「こいつぁ酷い・・・」
と真っ青な顔になっていた。私は
「ネル!すぐに警察を呼んでくれ!私と相続財産管理人はここで見張りをしているから」
そう、これは私の推理した通りであった。これで大地主ヤラ・ナイコの遺産問題も一気に片付くであろう。

終わり

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