ドアが不自然なほど静かに開いた。
元々鍵なんてかかってなかったのかもしれない
廊下から1歩、2歩と不規則に音を微かにたてながら近づいてくる。
私は転がり起きて、できる限り静かに押し入れに隠れようと押し入れの扉を少しずつ開けた。
「カタッ」
小さく音がなった。足音は止まっていた。
聞かれた……
そう思いながら押し入れに身を隠した。
足音が近づいてくる。
そして目の前で止まった。
「まだ温かいな。」
そう言った後に、ガンッ、と音がした。
終わったと思ったが扉を叩かれたかだけだった。
足音は階段を登り、2階に行った。気がした。
足音が遠ざかる。
急いで押し入れから這い出す。
玄関まで行きたいが、足音を立てられない。
かわりに、台所の食器棚の下の収納スペースに身を押し込む。
湿った匂いと埃で喉が焼けそうだ。
遠くで、水道がひねられる音。
続いて、床に水がこぼされる。
パシャ…パシャ…
その中を、靴底でゆっくり踏みしめる音。
「……滑るぞ」
どこから聞こえているのか分からない。
でも、足音が食器棚の真横で止まった。
金属をこする音が耳に入る。
包丁の刃を、爪でなぞっている音だ。
「……狭いとこ、好きか?」
呼吸を止める。
心臓が鼓膜の裏で跳ねる。
足音が離れていくのを待つ。
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 8票






















※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。