二階の床がきしむ音。
今だ。
収納から這い出し、階段下の物置に走る。
ドアを少しだけ開けて、中の暗闇に潜む。
……階段を降りてくる音。
一段、一段、間隔を空けて。
わざとだ。
こちらの鼓動を数えているかのように。
物置の前で足音が止まった。
隙間から、片目だけが覗く。
笑っている。
次の瞬間、その片目が消え、足音が遠ざかる。
だが、それが罠だと分かっている。
じっと動かず、耳を澄ます。
…………。
……。
何も聞こえない。
ただ、自分の血の音だけが響く。
――その瞬間、背後の物陰から息がかかった。
反射的に飛び出す。
廊下を走る。
背後で笑い声が響く。
私は飛び出し廊下を走り抜け、洗面所の暗闇に身を隠した。
息を殺し、タオルで口を覆い、存在を消そうとした。
――廊下で床が軋む音。
……近い。
低く、重く、確実に近づく足音。
トン…トン…
ドアを軽く叩く音が、こちらに返ってくる。
息を止めたまま、胸の奥で血が暴れるのを感じる。
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