【登場人物】
・佐伯真琴(さえき まこと)(20歳・大学生)
・古アパート「白蓮荘」
・名前を呼ぶ女の霊
大学進学を機に、真琴は格安で見つけた古いアパート「白蓮荘」に引っ越した。家賃2万円。築50年以上。駅からも遠い。
「なんか、幽霊でも出そうなとこだね」と友人に言われたが、生活費の厳しい真琴にはここしか選択肢がなかった。
引っ越し初日の夜。布団に入って眠ろうとすると、どこからか「…まこと…」と、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。
女の声だった。気のせいだと思い、目を閉じた。
だが、翌晩も。さらにその翌晩も。「…まこと……」と、どこか悲しげで、執念のような声が部屋中に響く。
ある晩、耐えきれず声の主を突き止めようと立ち上がった真琴。声のする方向に向かうと、ふすまの向こう──押し入れからだった。
恐る恐るふすまを開けると、そこには古びた布団と、黄ばんだ女物の着物が無造作に詰め込まれていた。
その瞬間、押し入れの奥から**ずるっ…ずるっ…**と何かが這い出してきた。
白い顔。黒く濡れた髪。両目が、穴のようにぽっかりと空いている女の霊だった。
「返して……わたしの名前……」
そう言って女は真琴に手を伸ばした。
混乱する真琴の耳元で、もう一つの声が囁いた。
「ここに住んだ者は…みんな“その名前”を奪われるの……」
気づいた時、真琴は自分の名前が思い出せなくなっていた。
携帯の連絡先にも、自分の名前がない。学生証も、免許証も、空欄になっている。友人に電話をしても、「え、誰?」と切られる。
そして夜になると、あの女が、今度は真琴の声で、「…名前を、返して…」と誰かの名を呼び始める。
「名前を返して」
このアパートでは、数年ごとに「身元不明の住人」が消える事件が繰り返されているという。
名前を奪われた者は、やがて存在そのものが霧のように薄れていき…最後は、存在を消されるのだと言う。
怖い怖い怖い
大丈夫?
怖いなぁ
すんげぇこわい
怖くないよ
私が作ったほうが怖いよ‼️
かなり怖かったです。
アパートに住みたくなくなったです…。