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ヒトコワ

鬼笑いの語り部さんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

横断歩道を渡るときは手をあげましょう
短編 2025/03/11 11:03 783view

雨が降る薄暗い朝、桜井はいつもの通勤路を急いでいた。道沿いの横断歩道には、小学校低学年くらいの女の子が立っていた。黄色いランドセルカバーが目を引いた。桜井は少し急いでいたけど、心のどこかで「手をあげて渡る姿、懐かしいな」と微笑みを浮かべた。

信号が青になったので、桜井も横断歩道を渡り始めた。でもその瞬間、胸に奇妙な感覚が芽生えた――風景に何か違和感がある。振り返ると、さっきの女の子がいない。「どこ行ったんやろ」と思い、急ぎ足で渡り切った。

次の日、また同じ時間、同じ横断歩道に差し掛かった。すると昨日とそっくりの女の子が、また信号待ちをしている。違うのは、今日は明らかに顔色が悪いことだ。「大丈夫かな」と思いながら横を通り過ぎた。

その次の日も、そのまた次の日も、女の子は現れた。そして、少しずつ彼女の様子が変わっていく。ランドセルはくしゃくしゃになり、制服の襟元が汚れていく。けど、その目だけは桜井をじっと見つめている。

1週間後、桜井はとうとうその横断歩道を避けるようになった。その代わりに使う回り道では、古い公衆電話がぽつんとあるだけで静まり返っている。その時、電話が突然鳴り始めた。驚いて足を止める桜井。恐る恐る受話器を取ると、低い子供の声がこう言った。

「どうして手をあげなかったの?」

受話器の向こうから、不気味な車のブレーキ音が響き渡り、桜井は急に視界が真っ暗になった…。

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コメント(3)
  • 意味不明

    2025/03/11/23:23
  • ヒトコワ?

    2025/03/12/00:14
  • 怖っ

    2025/03/28/10:07

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