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不思議体験

藍咲 青さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

二つの月に祈る者たち
短編 2024/02/09 04:02 1,414view
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中1くらいの時に体験した奇妙な出来事です。

学生時代、剣道部に所属しており部活が終わっても自主練にと近所の川辺へとランニングをし橋の下辺りで素振りをするなどをして必死に部活に打ち込む日々を送っていました。そんなある日、たしか夜の20時を過ぎた頃いつものように川辺で素振りをしている時にふと空を見上げると何故か月が2個浮かんでいました。片方の月はいつも見てるようなサイズの三日月でもう一方はやたらとデカい満月のような何かでした。最初は近くの店の電光看板か何かだと思ったのですが、看板にしては異常にデカくて距離も近く感じ、色も蛍光灯の明かりではない山吹色の煌々とした明かりで月明かりに似ていると感じました。そんな頭上の光景にとても理解が追いつかず「何で月が2個あんだ!?アレって超デカい隕石か!?地球滅亡!?俺死ぬのか!?」などアホな事しか考えれずに空を眺めていると周囲に人の気配を感じ辺りを見渡すと7、80代位の男性が地面に正座して合掌していました。いつの間にかいた老人に一瞬ビビリましたが何とか一緒に逃げねばと思い「ジィちゃんここヤベェから早く逃げるぞ!!」と老人に声を掛けるも無視、何度叫ぼうとも聞く耳を持たないといった様子でただ頭上の月に向かい合掌をし続けていました。そしていつの間にか老人以外にも人が集まりだし子供や若い女性、中にはバイク用のヘルメットを被った人やパジャマ姿の人までもが集まり皆一様に月に向かって合掌やキリスト教(?)の祈りを捧げ始め、さながら「この世の終わり」を体現した光景でした。そんな異様な光景を前にするも「祈ってねぇで逃げるぞ!!」と捲し立てるも全員無視、混乱する頭を抱え頭上に視線を向けると先程よりも月(デカい方)が迫って来ておりその表面(月面?)が肉眼でも目視出来る位の距離にまで近づいて来ているのに気付き息を飲みました。その瞬間死を覚悟し、死ぬと思った途端に葛藤や後悔、会いたい人の事などが頭の中を一気に駆け抜けましたが不思議と冷静になり自分も迫る月に向かって手を合わせ目を閉じました。

ほんの数秒にも満たない時間、目を閉じただけなのに次に目を開けると周囲にいた人たちが消え、そして遙か頭上には太陽が昇り普段と変わらない川辺の風景が広がり自分はその場に立ち尽くしたままでした。地面に落ちた竹刀を拾いながらさっきまでの出来事を考えるも「さっきのは夢?幻覚だった?!」と軽くパニックになり急いで帰宅する事に。家に着くと時計は11時を過ぎており鬼の形相をした祖母に「1晩中家に帰らんでどこ行ってた!!学校サボって!!」と怒鳴られ傘でぶん殴られました。激怒する祖母に昨夜の出来事を話すも信じてもらえず「デタラメ言うな!!」ともう一発ぶん殴られ泣き泣き学校に行くことに。その帰り道に川辺周辺の建物を見渡したのですが山吹色の光を発する看板の類いは無く、近所の人に聞き込みをするも「そんなモノ見ていない」と一蹴されてしまいました。

この出来事から数年後に金星の接近でも似たような光景が見れる事を知りましたがやはり大きさや距離感などが自分が見たそれとはかなり違いました。

結局の所、自分が見た光景や集まった人々が何だったのか10年以上経った今でもよく分かりませんが、あの日見たもう1つの月が不気味ながらもとても綺麗だった事だけはハッキリと覚えています。そしてもし叶うならもう1度あの月を見てみたいと思う反面、次にあの月を見てしまったら「もう帰って来れない、無事ではいられない」という考えが未だに脳裏を過ぎります…。

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コメント(2)
  • このひと、いつもタイトルがカッコいいよなぁ〜

    2024/02/09/12:31
  • すごい、かっこいい。

    2024/02/13/01:22

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