幽霊スケッチ
投稿者:藍咲 青 (11)
学生の頃、趣味が仇になった話です。
自分は昔から他人には見えない変なモノが見えるタチでした。けれど見えたモノを他人に言っても信じてもらえる事は殆どなく変人、電波扱いされ悔しい思いをするばかりでした。成長に伴いコミュニケーション能力を身に付け社会を学び『他人は自分と違う事を嫌がる』という事を知って以来見えたモノを他言する事をしなくなりました。ですが見えるモノは見えてしまい自分1人で抱えるのも辛くなってきたので憂さ晴らしに見えた連中をスケッチする事にしました。他人に見えないモノが見える苦しみ、誰にも理解されない悲しみ、話しても信じてもらえず馬鹿にされる怒りをペンを握り絞めスケッチブックに吐き出しました。絵を描き終わると何故かスッキリしたのでそれからも変なモノが見えたらスケッチする事にし、何時しかそれが趣味の1つになっていました。描き始めたのが小学5年生位からでそれから高校生になるまで幽霊のスケッチを続け何時しか不気味なスケッチブックが10冊近くに増えていました。
ここからが長く続けた趣味を辞める切っ掛けになった話。自分が通っていた高校は全寮制の学校で偏差値が低く馬鹿ばかり、田舎の学校だったので暇つぶしによく心霊スポットに行っては騒ぐ今となっては馬鹿丸出しの遊びをしていました。そして心霊スポットに行くと必ずではありませんがたまに幽霊がいてその姿を見ては嬉々としてスケッチしていました。この頃自分は友人達に霊が見える事をカミングアウトしており、その中には自分と同じように霊が見えて苦労した奴がいて初めて悩みを共感出来る嬉しさに感動し「そんな事で嫌ったりしないから安心しろ!それよりも面白いのが見えたら教えてくれ!」と友人達に言われ心の底から感謝したのを覚えています。このような事があり見えたモノを描き友人達と騒ぐ日々を送っていました。そんなある日の昼下がり買い物をしながら街中を歩いていると1件の雑居ビルが目に留まりました。見た感じ廃ビルになっていてビルの入り口脇に花束と線香、飲み物が備えられていて「何かあったビル」なんだと直感し悪趣味ですが周囲の探索を開始しました。ビル周辺は荒らされ自分と同じ系統の輩が馬鹿やった跡があちこちに見受けられ「暇人共が、他にやること無ぇのかよ」と自分の事を棚に上げ嘲笑しながらビルの中へ侵入開始、空っぽになったビルの中を1人歩きながら屋上までたどり着くとそこには人がいました。サラリーマン風の男性がフェンスの向こうに立っていて自分の目の前で身を投げました。「嘘だろオイ!!」と慌てて下を覗くも眼下には何も無く「あぁ、またアレか暇だしスケッチしてから帰るか」と今見た光景を手帳に下書きする事に、しばらくするとまた目の前にサラリーマンが現れ落ちて行きました。自殺者はその場で繰り返し自殺すると聞いた事がありアレって本当なんだなぁと感心していると『見てんじゃねぇよ!!』と耳元で声がしました。驚いて振り返ると頭が弾けたザクロみたいになり手足があらぬ方向に曲がった男がこちらを睨んでいました。「えッ!?」と思うと同時に男は消えたのですが急いでビルから逃げ出しました。自分からコンタクトを取ってくる奴に逢うのは初めてだったので驚きと恐怖と興奮が混ざった変なテンションのまま寮まで帰りました。色々やっている内に夜になり落ち着いた頃にスケッチを再開、1時間程絵を描きもう少しで完成するところまでいくと急に部屋の中が寒くなり『俺を見るな!!見るな!!見るんじゃねェ!!』と嗚咽混じりの声が部屋に響き窓の外にはあのサラリーマンが張り付いていました。悲鳴をあげながら友人の部屋に飛び込み、寮生全員で俺の部屋に突撃するももう誰もいませんでした。そして友人達に今日見た事を話すとお祓いに行く事になり、翌日近所の寺に全員で行きました(友人達は面白そうだからと付いてきました)
寺の坊さんに事情を話し描き溜めたスケッチを見せると顔面パンチを喰らい「死者に対する冒涜だぞ!!」と怒鳴られ軽く半泣きになっていると「いいかい?霊の声を聞いたり姿が見えるとソレと縁が出来るんだ。それを放っておくとどんどん集まって君だけでなく君の友達や家族にまで悪い影響が出るんだ」と坊さんは語り、「このスケッチブック全部供養するからもう二度とこんなモノ描かないと約束出来るな?」と詰め寄られました。坊さんのあまりの気迫に押され頷く事しか出来ずにいると「お前ら全員のお清めをするから着いて来い」と本堂に連れて行かれ全員お祓いをしてもらいました。スケッチブックのお焚き上げと坊さんの長い読経が終わり全員が足の痺れでくたばっていると坊さんが「不思議なモノが見えるのは決して悪い事じゃない、それが見えるのは仏様の目をお借りしているからでとても有難い事なんだ」と説法を説いていて仏さんのせいでこんな目にあってんのかとイラっとしましたが、またぶん殴られると敵わんので黙っていました。その後お祓いのおかげかあの男はあれ以来現れず、平穏な日々とは言えませんが普通に学生生活を送れました。そして坊さんとの約束もあり幽霊とかを見掛けてもスケッチする事をしなくなり、せいぜい話しのネタにする程度に留めるようにしています。
以上が趣味も高ずるとロクな事がないという一例、というか自業自得な体験談です。余談ですがこの友人達とは現在も親交があり、その中の霊感持ちの友人の仕事(オカルト系雑誌の)を地酒を報酬に手伝ったりしています。
最後になりますが、変わらず見える俺に変わらぬ関係でいてくれる友人達にこの場を借りて感謝を。ありがとう。
良い友人に恵まれましたね。応援したいです。
タイトルが素敵(kana)