黒い影2
投稿者:海堂 いなほ (14)
黒い影の続きになります。
その日のうちに、私は、宮司(神主)さんのお祓いを受けることになり、私は、神殿に連れて行かれました。神殿には大きな鏡、玉串、お供え物などがあり、宮司さんは私をその鏡の前に座らせる。そしてゆっくりと話し始めた。
「今から、お祓いをします。すぐに終わりますので、少し目を閉じていてください。」
私は、一部が見えない視界を閉じると、おもむろに合掌し、宮司さんに身を委ねた。
宮司さんの声が、心に響くというか、全身に染み渡る様に何かが入ってくるのが分かる。それと同時に何かが消えていくのも分かりました。
「祓え給え、清め給え~中略~。終わりとなります。」
私は、思いのほか早く終わったお祓いに少し驚いてしまい、ぼんやりと宮司さんを見つめた。
「もう終わりですか?」
「はい、少しお話よろしいですか?」
宮司さんは、私を神殿から奥の客間のような部屋に案内した。部屋は簡素な作りで、ソファーが二つ向かい合って並んでいる。宮司さんは、私にソファーに座るように促し、そのまま、私は、何も考えずにソファーに座る。すぐに、私の前に宮司さんが座り、缶コーヒーを私に差し出しました。
「どうぞ。」
「あっありがとうございます。」
私は、とっさにお礼を言うと缶コーヒーを開け、一口、口に含みました。
「目、いかがですか?」
そういえば、見えていなかったはずの視界の半分が見えるようになっている。私は、手のひらを見つめながら、この不思議な現象に純粋に驚いていました。
「あっ、ありがとうございます。でも、どうやって。」
「今回は、単なる残穢でしたので、このくらいのお祓いで十分効果が得られたのです。」
「残穢?」
「はい、一般的には、なじみのない言葉ですが、まー、悪霊のマーキングのようなものです。」
宮司は、顔の前で手を組みながら言った。宮司の顔を見ると、切れ長の目が涼しげに輝いている。歳は私と同じくらいだろうか?
「マーキング、なんだか、犬みたいですね。」
「そんな可愛いものではありませんよ。女性がとりついていたと言いましたが、女性と言うよりも、般若に近かったかもしれません。それよりも、聞きたいことがあるのですが。」
「はい。助けていただいたお礼もしたいので」
「どのあたりで、視覚を失い始めましたか?」
私は、質問が分からず、困惑してしまった。視覚を失い始めたというのはどういう意味だろうか?私が宮司の意図を図りかねていると宮司は言葉をつづけた。
「私は、この神社の宮司をしていますが、除霊もしています。これまでも、数多くの霊を払ってきました。私が、払えなかった霊がいくつかいましたが、今回、貴方についていた残穢は、その一つで、私が探している霊です。」
「はあ。」
宮司の言っている意味が分からず私は、気の抜けた返事しかできなかった。
「貴方の置かれていた状況から話をしますと、今回は、視覚の半分を失っただけでしたが、あのまま、ほおっておくとすべての視覚を失います。次に、聴覚、触覚、嗅覚、味覚と徐々に失っていきます。」
宮司は、深刻そうな顔をして話をつづけた。
まだつづきがありそうな予感
宮司さんに感謝、感謝です。