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不思議体験

海堂 いなほさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

天を回らす夢
短編 2024/08/25 15:44 890view

 私は、九州の片田舎から出て、東京都千代田区に引っ越してきて、毎日驚いています。特に、私の田舎の高い建物といえば、一棟だけあったタワーマンションだけだったので、まさしく高層ビルが林立している姿を見たときは摩天楼に来た気分でした。

 さて、私には、東京に引っ越してきたころに夢にまつわる一つの悩みがありました。それは、同じ夢を見ること。その夢は、真っ暗な場所に一人閉じ込められる夢で、私は、椅子の上に座っているだけの夢です。田舎育ちのおかげで、暗闇にそこまで恐怖を感じない私でしたが、それでも真っ暗な部屋にしかも狭い部屋に一人きりでは、背中に冷たいものを感じてしまう。しかも、耳が痛いほどの無音の世界。私だけがいる夢。それでも、身体全体が動かないわけではなく、上半身は比較的動かせるので金縛りではないようです。それでも、少し動かすと壁に当たってしまう。

 「毎日、同じ夢を見ると嫌気がさすし、ただでさえ、引っ越してきたばかりで、仕事で疲れているのに、夜まで悪夢を見ると心を病みそう。」

 それに、この夢を見ると必ず、ベッドの隅に私は座っているおかげで、疲れが抜けない。

 さらに数日が経つと、夢に変化がありました。夢の中で私は、いつものように狭くて暗い部屋に座っています。そこに、音が聞こえてきます。自然の音ではない、機械音。そう、エンジン音が鳴りだしたのです。聞き慣れない機械音は、夢にさらなる不気味さが、加わった私の夢。回りを見回しても、真っ暗で何もみえないなかで、手がなにかを握っていることに気がついた。固いプラスチックのような感触。手を離したくても手の力が抜けない。手が離せない。そこで、私は、目を覚ましました。寝汗でびっしょりになりながら、ベッドの縁に座っている。

 私は、さすがに毎日同じ夢を見ていたので、寝不足も続き、仕事にも支障が出るようになったので、精神科の病院に行きました。しかし、先生には、「引っ越しして、環境が変わって疲れているだけでしょう。軽めの睡眠薬と精神安定剤を出しておきますね。」と言われて、早々に診療室を出されてしまい、頼りになりません。

 薬を飲むと少し眠りが不快のか、朝方までぐっすり夢を見ないのですが、朝方にはまた、同じ夢が始まったのです。ただ、夢は、いつもと違ってエンジン音が鳴り始めたところからでした。そして、すぐに赤ランプがうっすらと点灯し、暗闇の世界から赤い世界が狭い部屋に広がっていく。私は、何も考えられずひたすら、目の前の何かを見ていました。そこには見たことのないメーターや機械が並び、さらに、私の目の前辺りまで、天井から伸びた円柱形の何かがあり、そな真ん中のに”0”と書かれ、左右に1、さらにその外側に2、3、4と書かれていました。まるで、映画に出てくる戦闘機のコックピットにでも閉じ込められたのかと思いましたが、空も見えない飛行機はないし、”車の中?”と思ったもののアクセルもブレーキもない。そして、頭を振ることができた理由がわかりました。私は、椅子に座っていたのです。

 そこへ、鼻をつく質の悪い油のにおいが漂ってきしました。工場の近くで嗅ぐことができる臭いに近い。

 次の瞬間。

 ”動いている”どの方向に動いているかは、わからないが、確かに動いている。動いていることだけがわかる。夢の中で必死に藻掻く私は、まさしく恐怖の中に突き落とされた気分でした。そして、酷い爆発音とともに私は目を覚ました。リアルな夢に、汗びっしょりになりながら、私は、やっぱり、ベッドの隅に座っていた。携帯を手に取るとようやく現実に戻ってきたと思って、大きく息を吐いた。スマホには4時41分と表示されている。

 それ以来、その夢を見ることはなくなりました。

 次の日

 引っ越して初めて、両親と祖父母が私の家にやってきました。その時、祖父がおかしなことを言ったのです。

「ずいぶんいいところに住むことにしたんだな。儂もここにはよく来るから、時々、立ち寄らせてもらうよ。」

 「いやよ。おじいちゃんが来るなんて。」

「なんてことを言うんだ。まったく、酷い孫に育ったもんだ。小さい頃はおじいちゃん、おじいちゃんってついて回ったのに。」

 冗談めかして、祖父はそう言った。何かにつけて、笑い話にする祖父だったが、そんな祖父が、まじめな顔をして言うのです。

「明日、じいちゃんの友達のところに一緒に行くか?」

「友達いないって言ってたじゃん。」

 私たち家族は、祖父の提案により、祖父の友人のところに行くことにしましたが、私以外は、どこに行くかわかっている様子でした。

 友人のところに向かう祖父は、いつもと違って少しうれしそうでした。

「久しぶりに皆のところに行って、冗談言わないといけないからな。」

「ええっ私行かなくてよくない?」

「そういうな。せっかくこんないい所に住んでいるんだから、毎日でも行ってもらいたいぐらいだ。」

 私は、祖父の言っている意味がよくわからないが、楽しそうにしている祖父の姿を見るのは、少しうれしい気がした。

「着いたな。」

 そこは、大きな青銅色した鳥居の前だった。

「おじいちゃんの友達ってまさか。」

「そう、みんなここにおる。儂もいつか、ここに来て、みなが作った日本がこんなに良くなったって伝える役をしないといけないからな。時々来て、途中経過を話をしてやらないと”はよう来い”と言われてしまうからの。」

「それは、困るな。」

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