八方睨み地蔵
投稿者:白と黒の旅人 (32)
今回は中学生頃のまだ霊感が芽生えていない?頃の私の体験談。当時霊感らしき霊感はなかったのでそこまで怖い話にはならないかと。だって何か起こってたとしてもわかんねぇんだもん……
私の地元には八方睨み地蔵と呼ばれるお地蔵様の集団が隣町との境の山中に建てられている。
このお地蔵様、互いに背中を向けており、それらが円を描くようになっている。
これは円の中に大昔に封じた妖魔がおり、それがお地蔵様を頼ってやってくる餓鬼を操り逃げ出そうとするためお地蔵様を外向きに配置することで餓鬼達が妖魔と話すことなくお地蔵様が対処してくれるというわけだ。
さて、このお地蔵様のひとつが悪ガキによって壊れた時、隣町の私達のところに手伝いを求める伝えが来た。
このお地蔵様、お勤めが大変ということで定期的に掃除や風化対策として修理を行う事で大切にされていたのだがお地蔵様の一つの頭が壊されてしまった。
隣町は私達の地元ほど土地の信仰が根強くなく、人が増えるにつれ信仰が風化した為起こったことだった。
私達の地域民に頼まれた仕事はお地蔵様を修理する間、空いてしまったお地蔵様の結界から妖魔が抜け出さないように見張っていて欲しいと言うわけだ。
というわけで地元民の中から神職数名+当時神社でお世話になっており歳的にちょうど良かった私+猟師数名と言った感じ。
お地蔵様自体の修理は結構早く終わるらしい。なんてったってちゃんとした「仏師」とでも言うのだろうか、とりあえず仏様を彫る専門職の人があらかじめ作り治しておいてくれた頭を元通りにするのだ。基本的にかかる時間と言えば頭をくっつける、お地蔵様を元通りにする、お地蔵様にお詫び、結界の作り直し合わせて5時間ほど。
やっぱり石造り故定期的に風化したりするのでここら辺の対応は技術発展と共に発見が早まることで慣れているらしい。
さて、山に入ってからの私の役割なのだが、要はお地蔵様の代わりらしい。
私含む隣町の子ども何人かを他のお地蔵様のように座らせ、お地蔵様が戻ってくるまでの時間稼ぎ。
祝詞などで結界をパッチワークのように繋いで物理的な障壁を若い子どもで作る。この子どもは清らかであればあるほどいいのだが、その当時、偶然ボランティアみたいな形で神社の手伝い、つまり神様への御奉仕をしていた若き日の私がいたため「こりゃちょうどいいな」と連れてきたとか。(宿題とかはしれっと父親が終わらせてくれていたため心配なし)
隣町の子ども達は大体が小学校高学年〜中学2年ぐらいまで。
みんなも私も白い着物を着せられている。
違いと言えばみんなはビクビクしているが、私は「神主さんがいるんなら大丈夫だろ」と結構斜に構えてたところだろうか。
いざ始まった儀式なのだがこれまた異様なのだ。祝詞のようなリズムなのだが祝詞らしからぬ言葉が聞こえる。普段結構祝詞を聞いてたりする人なら分かるだろうが基本的に神様に対する言葉だったりするのが祝詞。その時聞いた言葉はなんというか戒め的な事を言っていた気がする。
スタート時点でだいたい夜21時頃なので、少しすれば小学生組は眠くなってうつらうつらしてくる。
隣の私にもたれかかって寝息を立て始める子もいたが基本直ぐに起こされる。
ゲームで生活リズムが狂いつつある私はそんなもの屁でもないとポケ〜っとしていた。
会話自体は許されていたし、みんな、「いつ帰れるのか」「眠い」「怖い」みたいなことを言っていたがやがて「隣町のOの兄ちゃんはどんな人なのか」という私への興味、質問へと変わった。
ところどころで熊よけのために笛が吹かれたりする。
その後、夜の2時頃にはお地蔵様は元通りにされていた。
終わったあと頭から冷水をぶっかけられたのだがこれがまぁ冷たくて死にそうになった。
プールのシャワーのようにキャアキャア言う子も入れば冷たくて歯をガチガチ言わせてお互い抱き合う子もいる。私は後者であった。
よし、帰るぞ〜と呑気な私だったが他の子はそうとも行かなかった。
彼女たちはこの後、お地蔵様の言われについてのお話と壊したらどうなるかなどのお小言、それと壊した悪ガキと一緒にお祓いらしい。
「そーいや俺はどーなんスか?」と隣町の神職の方に聞いたら「ゆーて坊ちゃんは隣の神様に護られとるからなぁ。ワシらが説教する訳にもいかんし、何より今回はお手伝いしてもらった身だからお祓いとか必要なほど危険なことはさせていない。子どもたちがお祓いするのは思春期真っ只中の子供より少し年下の本当に中学1年とかの年頃が1番危ないからだ。」
と言われた。
まぁ結局その場で簡単に私の町の神主さんにお祓いしてもらったのでお祓いしてないというわけではないのだが。
興味深い風習でしたね。
お地蔵様は大切にしなければいけませんね。
お地蔵様の役割なのですが道祖神としての役割、慈悲深い心で餓鬼道に堕ちた魂を救おうとする、道を通る悪いものを見張る、見ている先に悪いものが来ないか見守るなどがあります。他にも複数いると集団の圧力みたいな感じで結界になるんだとか。
このお地蔵様達はそう言ったお地蔵様の役割を利用したものかと
誰一人祟られなくて良かったです。