お盆の海で見た灯り
投稿者:G-ya (1)
私が子どもの頃に体験した話です。怖い話ではないですしヤマもオチもないですが、今でもときどき不思議に思うので投稿します。
私の父方の祖母の家は田舎で、海のすぐ近くにありました。お正月よりもお盆の行事を盛大に行う地域だったので、毎年お盆になると親戚一同祖母の家に集まります。
特別にこれといった珍しい風習はありません。久しぶりに会う親戚と食卓を囲んで、話が盛り上がるくらいです。子どもの頃はいとこたちと遊べるのが楽しみでした。
ただ、お盆最終日の夜は海に行ってちょっとした儀式を行います。他に言い方が見つからないだけで、儀式というのも大げさですが。
行うのは砂浜でお線香を燃やすこと、そして、和紙を折って作った舟を海に流すことです。
紙の船を流す由来は聞いたことがありませんが、海が近い祖母の家の地域では、ご先祖様の魂が舟に乗ってくると言われているようです。
なので、紙の舟が、一般的な野菜でつくった馬や牛の代わりなのだと思います。
お盆の最終日にその舟を海に流すことで、ご先祖様をお見送りしているのでしょう。
舟を流すのは子どもの役目でした。私も小学校3年生か4年生のときに、その役になりました。
親戚それぞれがお線香を燃やした後、私は膝くらいまで海に入って舟を浮かべました。あまり波打ち際に近いとすぐ砂浜に打ち上げられてしまうからです。
田舎の夜の海は暗く、手を離した舟が海面で揺れているのは、しばらくして見えなくなりました。沈んでしまったのかもしれません。
儀式が終わってみんなで家に帰ろうとするとき、私は海を振り返りました。
そのとき、遠くの海の上に、赤い光がいくつか見えました。7つか8つくらい、明るければ地平線が見えるくらいの距離だと思います。
私はそばにいた母に、「あれ何?」と尋ねましたが、母は何のことかわからなかったようです。
「あれ、船の灯りなの?」
「灯りってどれ? 今日はお盆だから船は出てないよ」
母には赤い光が見えていないようでした。
当時はなぜかそのことを不思議に思わなかったのですが、成長してからこの時のことが気になるようになりました。
そこで、同じく舟を流す役をしたことがあるいとこの一人に、この話をしてみました。
すると彼は「同じ体験をしたことはないが、お盆のおばあちゃん家で撮った写真に、火の玉のような赤い光が写っていたことがある」と言いました。
その話を聞いて私は、ご先祖様の魂をいうのは、生きた人間の目には赤い光に見えるのかもしれないな、と思いました。
子どもの頃私が見た海の上の灯りは、紙の舟に乗って帰っていくご先祖様たちだったのかもしれない、と。
書き終えて思ったのですが、この話、夏に投稿したほうが良かったですね。
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