私と猫と妹
投稿者:take (96)
私が高校生の時の話です。
夏休みに友人数人と海へいったのですが、その近くで水死体があがったのです。
まだ引き上げられたばかりで、シートなどは被せられていませんでした。
顔は見ませんでしたが、膨れ上がった体とブヨブヨの手足を見てしまいました。
それが、やけに印象に残って頭から離れず、(見入られたかも)と思っていました。
その夜に案の定、金縛りに遭い、ベッドの側に昼間の『アレ』が立っていたのです。
中年の男で顔も体も真っ白でパンパンに膨れ上がっていて、眼窩は空洞になっており、
口からだらりと舌を垂らしていました。
強烈な異臭が漂い、ぶよぶよになった崩れそうな腕や足からは、ポタポタと水滴が滴り落ちています。
(すいません、俺にはどうにもできませんから、他を当たってください)
と、念じましたが、相手は体を屈めて顔を近づけてきます。
やべえ、と思った時、部屋のドアが勢いよく開けられ、何かが飛び込んできたのです。
それは家で飼っている三毛猫の『ナナ』で、男を見ると毛を逆立てて威嚇しました。
途端に男の姿はふっと消え、私の身体も動くようになりました。
「兄ちゃん、変なの連れ込んだでしょ?」
妹が部屋の入り口に立っていました。
「あー……昼間、海に行った時にな」
妹が明かりをつけたので、体を起こしてみると、男が立っていたところに水が溜まっています。
それをふきとり、ファブリーズを噴射しておきました。
「ナナと一緒に寝てたらさー、やけに騒ぐから部屋のドアを開けたら、まっすぐ兄ちゃんの部屋に飛んでいくもんだから、あー、なんかあったなって」
「ありがと……もういっちまったな」
「みたいだよ、少なくとも近くにはいないね」
私と、3歳年下の妹は揃って『霊感体質』なのです。
ナナはぴょんと妹の腕の中に飛び込みました。用事は済んだ、というところでしょうか。
「ナナちゃんは頼りになるねえー」
ナナは以前にもいちど、おかしなモノを追い払った実績があります。
「んじゃ、おやすみ」
「たすかったよ、おやすみ」
妹はナナを抱いて出ていきました。
それきり男が現れることはありませんでした。
ナナは今年20才を迎えますが、今も元気です。
ファブリーズwww
瞬間リセッシュ!!