奇々怪々 お知らせ

ヒトコワ

kanaさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

閉店の理由_加筆修正版
短編 2022/12/23 20:07 5,516view
2

これはまだ日本がバブル景気に浮かれていたころのお話です。

当時、渋谷の246(ニーヨンロク)沿いの事務所で働いていたボクは、
まだ20代前半の若造のくせにバブルに乗って景気も良く、
青山通りのオシャレなお店で毎日会社の女の子を誘ってランチとシャレこんでおりました。

壁面にミラーでコラージュを施したカフェ、
ポーチドエッグカレーが最高に美味しいお店、
シャリアピンステーキをランチで出すお店・・・
オシャレで美味しいお店がたくさんありますが、
そんな中で、今日訪れたのはイタリアンのお店。
イタ飯屋なんて言ってましたね。

お店は地下にあり、階段を降りて入口へ向かいます。
階段の途中にはワインのボトルやカゴに入ったジャガイモ等が置いてあり、
実用を兼ねたディスプレイになっています。

店内は少し暗めの照明で、テーブル席のみ。
室内の片隅には楽器を演奏できるような小さなステージもあり、
夜には音楽を聴きながらお酒も飲めるお店になるようです。

席に通されたボクらは、メニューの中からポークピカタを選びました。

料理が出てきてちょっとびっくりしたのが「アペリティーボ」つまり「食前酒」が出てきたことです。確かにイタリア料理では食前酒をたしなむものですが、ボクと女の子は顔を見合わせて「まだ勤務中なのに昼間っからお酒のんで大丈夫かな?」なんて話をしました。
が、結局「まぁ食前酒だし、大丈夫だろう」ということになりました。

一口で飲めそうな小さめのグラスに、血のように真っ赤なワインが注がれています。

クイっと一口飲んで、思ったより効いたのは、やっぱりすきっ腹で飲んだせいでしょうか。
「ホントに仕事大丈夫かな」なんて心配になってきましたが、
ポークピカタが運ばれてきた頃にはそんなことも忘れて、二人で楽しく食事を済ませました。

会計はもちろんボクが支払います。バブルのころはアッシーとかメッシーとか言う呼び名があって、クルマで送り迎えするのがアッシー、ご飯をおごるのがメッシーなんて分類されていたものです。
女の子にとっては良い時代でしたね。

カウンターの出っ張りの部分に手をかけて寄りかかりながらマスターのレジ打ちを待ち、
支払いを済ませて帰ろうとした時、サイフを持つ自分の指先に赤いものが付いているのを見つけました。

「ん?さっきの食前酒でもついてたかな?」
・・・いやそれにしては今まで気づかないでいるか?

「もしかして、今触ってたレジのカウンターに何か赤いものがあって、それを触ったか?」
そう思ってちらっと振り返ったものの、カウンターには別段異常があるわけでもなく、
笑顔のマスターがいるだけです。

1/2
コメント(2)
  • kamaです。こちらのお話はすべて実話です。

    2022/12/24/17:04
  • 懐かしいバブル!あの頃は毎日がお祭り騒ぎでした!ミツグ君も居ましたね!話は逸れましたが、せっかくのイタリアンが台無し。後味が~(>_<)

    2023/03/26/01:20

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。