前世の夢 広島より
投稿者:YoyoYoyoY (52)
短編
2022/12/21
14:19
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20代の頃、百貨店で派遣のアルバイトをしていました。
その日の仕事は、美術展覧会の受付の仕事でした。二人一組の仕事で、パートナーになった人は同じ年の女の子でした。
平日の午前中はお客さんも少なく、ほんの少しなら、雑談をしても良い雰囲気でした。
どちらからともなく、不思議な話を始めました。彼女は霊感が強いようで、前世の夢をよく見るようでした。
「私ね、昔 広島県に住んでいてね、ああ、今の私ではなくて前世の私でね」
彼女の話では、前世は広島県に住む5歳の女の子だったようです。
「ほら、第二次世界大戦があったでしょ。私は爆弾を受けて爆死したようなのよ」
俄かに信じがたかったのですが、彼女はさらに続けます。
「お母さんと手を繋いで、買い物に出かけたの。そうしたら戦闘機が突然やって来てね、一瞬で吹っ飛ばされちゃった」
「えっと、そのまま死んでしまったってこと?」
私は死ぬって、どんな感覚なのだろうと聞いてみたくなりましたがぐっと堪えました。
「きっとね、広島県のどこかに私のお墓があると思うの。そのときのお母さんがどうなったかも分からないけど、私みたいに生まれ変わって、新しい人生を歩んでくれてたら良いなと思ってるの」
彼女にとっては、過去のことで今の人生が一番大事だと言っていました。
キャビンアテンダントを目指す彼女の今世が、幸せでありますように、そう願いました。
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