ある弁護士の話
投稿者:キミ・ナンヤネン (88)
私は今、弁護士として活動している。
妻は専業主婦で、私が言うのもなんだが、とても美人で教育熱心の素晴らしい女性だ。
この春に現役で国立大に合格したばかりの一人息子は、調子に乗ってやんちゃばかりしている。
人の道さえ外さなければいいとは思っているが、男の子はそういうものだ。
私は昔から科学技術に興味があり、いつものように科学雑誌を読んでいると、とある論文が目に入った。
「VRで人格を変えられるか」というものだ。
もともとは、ある研究所の研究員W氏が、うつ病の治療として始めたらしい。
研究内容を簡単にまとめると大体こんな感じだ。
ある薬物を摂取した後、VRゴーグルを使って、ある映像と音声を視聴すると人格を変えられるという内容だ。
論文によると、うつ病の患者にほとんどに改善の効果が認められたという。
しかしその一方で、重い副作用があった。
患者の性格が、いわば別人格になったというのだ。
消極的な人が積極的になるだけならまだよかったが、その逆の場合や、普段おとなしい人が突然大きな犯罪を犯すような事案があったという。
しかし中には、いわゆる「狂った」状態になった患者もいたそうだ。
研究所には患者の家族から元の性格に戻してほしいと依頼があったが、その確実な戻し方の研究が進まなかったため、結局その研究は中止されたという結論だった。
私は今抱えている案件にこの研究が応用できるのではと考え、研究所を訪ねる事にした。
私は約束を取り付け、数日後に研究所に向かった。
4階建ての立派な鉄筋コンクリート作りの玄関に入り、受付に行くと
「今日の2時にWさんとお約束していました弁護士の(私)と申します」
「はい、伺っております。少々お待ちください。」
研究所の広い玄関ホールの壁には、数々の表彰状や、ショーケースの中に数々のトロフィーや盾が並べてあり、その内容はよくわからなかったが、何か立派な研究をしているだろうという事は明白だった。
2~3分程待っていると、W氏が出迎えてくれた。
私とW氏は互いにあいさつを交わし、早々に本題に入ることにした。
「あの論文に妙に惹かれるものがありまして…。」
「『あれ』ですよね…。」
等と話をしているうちに、W氏の研究室へと案内された。
研究室は1階の奥の角部屋で、お世辞にもきれいな部屋とは言えなかった。
それを察してか、W氏は
「汚い部屋で申し訳ありません。元は倉庫だった部屋だったものですから。」
「そうなんですね…。」
公私混同になっていませんか。
過剰防衛でも、ふつうの精神状態なら償うべきです。
>公私混同になっていませんか。
>過剰防衛でも、ふつうの精神状態なら償うべきです。
これはそういう話です。
この弁護士は何か妙な方法で解決しようとしているのですよ。
決して解決にはなってはいませんが。
作者より
そう来ましたか···