確認ヨシ!
投稿者:件の首 (54)
私はとある会社で、フォークリフトを使った倉庫内作業を行っている。
人員不足の折、時間に追われつつの作業は、馬鹿正直にやっていては回らない、そんな雰囲気が職場を支配していたのは確かだった。
その日、連日の残業で眠気を感じつつ、私はフォークリフトを操作していた。
それでもいつも通り業務を続け、退勤時刻が近付いて来た頃。
パレットに積まれたビールケースを上の段に置いた時、僅かに位置がずれた。
許容範囲内と考え、次のパレットを置こうとした時。
「あ」
ビールケースがゆっくりとバランスを崩し、倒れていった。
倒壊する赤いビールケースは、丁度、近くを通っていた同僚Aを呑み込んだ。
ビールケースの下敷きになったAは、全身の骨を砕かれ、生死の判断をするまでもなかった。
「何やってんだ!」
社長が駆けつけた。
「申し訳ありません!」
私は土下座する。
「救急車、は呼んだか?」
「あ、すぐ呼びます」
「待て」
社長は集まってきた社員を見渡した。
「こいつ、身寄りなかったな」
「その筈です」
「ええ」
「……うちの会社は零細だ。こんな事故で仕事が減れば、すぐに潰れる」
Aの血が広がっていく。
「お前ら、失業したいか?」
皆、首を横に振った。
私たちは、Aの死体を海に沈めた。
この辺りはシャコが多く、すぐに肉はなくなった。後の骨は砕いて、改めて海に捨てた。
身寄りのない彼の最期としては、こんなものだろう。
ところが。
1ヶ月ほどして、私の会社に女性が1人尋ねて来た。
Aの婚約者を名乗る彼女は、Aの行方不明になった状況について、調べていた。
その場は社長が取り繕ったものの、あまり納得した様子ではなかった。
もし彼女が週刊誌なり、ネットで告発したり、警察に訴えるなり、何かしら行動を起したなら。
真相に辿り着けないにしても、業務は相当に滞るだろう。
どうやら、社長も相当対応に苦慮しているようだ。
その証拠に「対策の会議をする」との連絡が入った。
まったく、面倒な事になったものだ。
こわいてすね。