事故物件に住んでた時の話リターンズ
投稿者:ジョンガリ (8)
大学生の時に女性が自殺した東京都某区の格安好立地の事故物件に住んでた時の話を1つ、また思い出したので…
プロローグとして、本作品群は「あぶ○い刑事」シリーズをリスペクトしているため、四作目という事で便宜上リターンズと書いておりますが、一作目二作目と異なり事故物件の話は皆無で、今作はあくまでも事故物件に住んでいた”時”に起こった話を綴らせていただきます。
それでも良ければ是非楽しんでいってください。
大学4年生の夏頃、前期の再履修のテストをしくじりにしくじった俺はどう計算しても明らかに単位が足りず、
課題でどうにか単位を融通してくださいと教授の革靴をダシがとれるほど舐めていた(本当は靴なんか舐めたりせず、顔から出うる全ての汁を垂らしながら土下座していた)のだが、
取り付く島もなく、ほぼ留年が確定している状態であった。
彼女には呆れられ、親からは罵られ、教授連中は髪の薄い頭を抱えていたが、土下座までした当の俺は何故か逆に驚くほど平静であり、まさに台風の目状態であった。
龍角散(「留年確定さん」を我が母校では敬意を込めて龍角散と呼んでいた)なのはほぼ確定しているので、とりあえず金を稼ぐのがベターだと思いバイトに精を出していた。
……というのは建前で、実際は大学の友達や彼女とは龍角散になった時から謎の居心地の悪さを感じてしまっていたため、俺はそれらから目を背けるかのようにバイトに熱中していたのだった。
その時の俺は家の近くに出来た沖縄料理店が空前のブームで、可愛がっている後輩二人と足しげく通っては泡盛を飲み、二次会として俺の部屋で古き良き宮古島の風習であるオトーリ(を装った三つ巴の飲酒インファイト)を紳士的に行っていた。
そして俺たち三人の血管には泡盛が流れている と言っても過言では無くなって来た頃、3人でどこかに出掛けないかという話になった。
夏は大体彼女と遠出していたのだが、優秀だった彼女は何かと忙しそうだったため誘えずにいた俺は二つ返事でオッケーし、バイト先のシフトは週ごとに決めていたのも幸いし、翌週には三人共通の休みの日を簡単に設けられた。
情熱、時間、少しの金とレンタカーまでは揃っていたが致命的な事に目的地だけが足りてなかった。しかし季節は夏、夏と言えば肝試しという安直な考えにより県を跨いで心霊スポットに行こうという話になった。
後輩二人は一人が北海道、一人は東京生まれであるため、関東の田舎育ちの俺の出身県にあるヤバめの心霊スポットに足を運ぶことにした。
実は我が出身県には激烈にMAXヤバイ心霊スポットがあり、その場所のトンネルを通った先にある井戸の中を覗くと 死ぬ という噂のある場所だった。
後輩の運転で目的地付近に無事到着し、急な遠出のため宿は諦めていたのだが近くの24時間の銭湯やカラオケ、ネットカフェなどに目星をつけつつ牛丼屋に入って腹ごしらえした。
古びた町並みに哀惜の念を感じつつ、ちょっとした観光を済ませた後、ちょっぴりだけ空が斜陽かかって来た頃俺たちは件の心霊スポットに足を運んだ。
いざ目的地に着くと、やはりというか普通に怖い。時間的にはまだ日暮れでは全然なかったのだが、トンネルの奥が全く見えない。まさに漆黒であった。陽光とトンネルの奥の黒のギャップが異様さを引き立てていた。
一応トンネルだけなら車で通れない事もないのだが、やはり肝試しの妙味は徒歩だろうと、俺たち三人は車から降りた。
スマートフォンのライトでも良かったのだが、やはり遊び心は大切ということで驚安の殿堂で入手した懐中電灯を手に、俺たちは、まるで大きく開いた口のようなトンネルに飲み込まれていった。
トンネルという場所は、やはりというか大抵湿っているもので、夏だというのに半袖だと薄ら寒く感じるほどだった。
トンネルの壁には○○上等!や○○参上!などの虚勢のような強い言葉や、おおよそここでは書き記せないような下品な落書きだらけで、俺たちは壁を照らしながら「何か変わった所はないか?」などと敢えて会話をしがら進んでいた。
というのもトンネル内には俺たちの足音、声の響く音以外に聞こえる音は無く、会話が途絶えたら多分無音に耐えきれず走って逃げ帰ってしまうだろうと言外に三人とも感じていたのだと思う。
トンネルも中間ほどまで来ただろうかという頃、俺は壁を懐中電灯で照らしていてあることに気がついた。
壁の落書きが一切合切 無くなっていたのである。
わざわざこんなところに肝試しをしに来るような気合いの入ったヤンキー達でさえ、トンネル中間付近までは怖くて来れないのかという事に若干可愛らしさを感じたのも束の間、
これは 引き返すなら今が最後のチャンス という人間の動物的な本能から来る最終警告の様なものにヤンキー達が従ったためだと気がついた俺は腕から首にかけてブワッと鳥肌がたった。
幸か不幸か、我が愛すべき後輩二人はIQが凡人程度なためか全くその事に気がついた様子はなく、俺はその二人に毒気を抜かれ、なんなら「面白くなってきた」と虚勢混じりに思いながら出口へ歩を進めた。
面白かった!
うーん、大学時代を思い出す
自分も怖いことあっても友達と飲んだらなんか眠れるみたいなことよくあったなぁ