サッカーボールと草むらの少年
投稿者:ショーヘイ (10)
短編
2022/03/01
12:01
1,151view
小学生の頃の出来事です。
当時俺は小学校4・5年、地元の少年サッカーチームに所属していました。とはいえはじめたての補欠に過ぎず、試合中はベンチを温めるのが主な仕事です。
自分が出してもらえなかった練習試合に惨敗した帰り道、川沿いの土手を歩いている時に思いがけないものが目にとびこんできました。萎んだサッカーボールが草むらに転がっているのです。
「落とし物かな……」
なにげなく拾い上げ観察した所、サッカーボールがぐねぐねと蠢き出してびっくりしました。
中に虫でも入ってるのか?
反射的に放り出した次の瞬間、ボールがひとりでに膨らんで土手を転がっていきます。
「待て!」
好奇心に駆り立てられ追いかけると、草むらに同じ年頃の少年が立っていました。
「パス!パス!」
両手を広げて叫ぶ少年にむかって咄嗟にボールを蹴りました。すると彼はにっこり微笑んで消えていきます。
「えっ」
満足げな少年をすりぬけたボールは川に落ちて流されていきました。
後で知ったことですが、あの道では数年前に事故が起き、同じチームの選手が命を落としていたそうです。
俺が見かけたサッカーボールは事故で破裂した残骸だったのでしょうか。その後レギュラーに昇格できたのは彼のおかげかもしれません。
前のページ
1/1
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 10票
優しい怪談ですね
パスしてあげたことで少年は成仏できたのかな