絶妙の火加減
投稿者:上龍 (34)
短編
2022/02/07
12:05
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私が火葬場で働いていたときの話です。
その日は水死体、即ち火葬場スタッフの隠語で「水仏」または「煙仏」と言われるご遺体の火葬の予定が入っていました。呼び名の由来は大量の水が骨まで浸透しており、燃やすのがなかなか難しいからです。
書類によると川で溺れて亡くなった七十代のご老人だそうで、心をこめて火葬にあたらせていただきました。
水が滴る棺桶を炉に入れてバーナーでじっくり焼いている最中、しわがれた声が聞こえてきました。
「ぬくい。生き返る」
「えっ?」
びっくりして炉の外側にもうけられた窓を覗き込めば、遺体がむっくり起き上がって伸びをしました。
「ひいいっ!」
後で先輩に聞かされましたが、火葬中にご遺体が起き上がる現象は珍しくないそうです。それというのも炉に炙られて骨や筋肉が収縮し、頻繁に姿勢が変わるからです。
しかし私が聞いた謎の声だけは誰も説明できず、神妙な顔を見合わせていました。
お骨上げの際、箸の先端でお骨を摘まんだ遺族の方々が「お父さん、あったまってよかったわねえ」「寒がりだったもんね」と述べていたのが印象的でした。
さらには「ご苦労様」とでもいうように背中を叩かれた気がしたのですが、さすがに思い過ごしでしょうか?
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火葬場は色々ありそうですね
お疲れ様様です。痛みいります。