菩薩のような男の裏の顔
投稿者:上龍 (34)
短編
2022/03/20
23:39
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友人のKはいい加減な男でした。
大学を出てからも定職に就かずニート生活を続け、気が向いた時だけコンビニでバイトします。
そのバイトだって責任感はかけらもなく、毎回のように遅刻して周囲に迷惑をかけまくっていました。
Kの同僚のAくんは気弱で口下手、気性の優しい青年でした。
Kが深夜にいきなり電話をかけ、明日のシフトを代わってくれと無茶ぶりしても快くOKしてくれたそうです。
さらには嫌な顔せずKのミスをフォローしてくれ、他の同僚たちもあきれ半分感心半分眺めていたといいます。
「Aくんて菩薩みたいねえ」
「優しすぎるからなめられるんじゃない?」
KもそんなAくんに依存しきっていたのですが……
ある日30分遅刻して職場に着いたKは、更衣室の壁にAくんが向かっているのに目をとめました。幸いこちらに背中を向けていてまだ気付いてません。Kは脅かしてやろうと気配を消して忍び寄り……ぎょっとしました。
Aくんが向かい合った壁にはバイトの名前を一覧にしたシフト表が貼ってあり、彼はKの名前の上に、無数の画鋲をぐりぐり突き刺していたのです。
翌日、Kはその店を辞めたそうです。今度こそ真人間になって出直してくれればいいのですが……。
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