逆さまの墓の理由
投稿者:上龍 (34)
短編
2022/03/23
21:37
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これは私が中学生の時によく見た夢です。
その夢を見る頻度は週2・3、大抵部活でしごきぬかれてぐったりして帰った夜でした。
夢の中の私はどことも知れない薄気味悪い墓地をさまよい歩いています。母方の祖父母が眠る霊園とも父方の先祖の墓がある寺の境内とも違い、寂れた雰囲気が漂っていました。
暫く行くと朽ちた墓に行き当たります。何故かその墓から目が離せず、前にしゃがんでよく観察し、違和感の正体を掴みました。
「名前が逆じゃないか」
墓に彫られた名前が逆さまになっているのです。墓石屋が間違えたにしてもいくらなんでも酷すぎると眉をひそめれば、急に背後に気配を感じました。
反射的に振り返るとそこには経帷子を羽織った男が立っており、墓石を指さして呟きます。
「お前も悪いことをするんじゃないよ。生前に憎まれた人間は墓の名前を逆に彫られるんだ」
「そうするとどうなるの?」
無知で無邪気な私の質問に男は一呼吸おいてきっぱり断言しました。
「地獄に落ちる」
次の瞬間目が覚めました。一体あの夢は何だったのでしょうか……男の言うことは本当だったのでしょうか?
以来、私は人の道を外れず正しく生きるように心がけています。地獄に落ちてはたまりませんから。
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