火葬炉の火が消えない理由
投稿者:上龍 (34)
短編
2022/03/02
23:41
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私は火葬場スタッフをしていました。火葬場には様々な死因で亡くなった故人様が運ばれてきます。病死や事故死は言うに及ばず、中には犯罪の被害者や死刑囚も含まれていました。
ある日の出来事です。私は炉裏に回り、強化ガラスを嵌めた窓越しに燃え加減を監視していました。もし遺体の一部が焼け残っていたらバーナーの火を強めねばなりません。
ところが……その時見ていた炉はやけにバーナーの火力が強いのです。炉に入れられた棺は既に燃え落ち、遺体も黒焦げになっています。
少し火を弱めようと調整したにもかかわらず炎の勢いはまるで衰えません。轟々と唸りを上げて荒れ狂っています。
一体どうしたことだろうと困惑した矢先、すぐ背後で性別も定かでない声が聞こえてきました。
「いい気味だ、燃えてしまえ……」
「っ!?」
息を呑んで振り返っても誰もおらずぞっとしました。
謎の声の予言通り遺体は完全に燃え尽き、後には殆ど灰となった骨だけが残されました。
「お骨上げの際に殆ど拾えず困りますね」
「遺族は来てないから大丈夫だろ」
「孤独死されたんですか?」
「人を焼き殺した放火犯の骨なんか受け取りにこねえよ」
同僚の一言でああ、そうだったのかと腑に落ちました。私が聞いたのは犯人に同じ苦しみを味あわせようとした亡者たちの声だったのです。
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先日の大阪の病院放火事件を思い出しました