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峰さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

友人Aが見た「あの世」 河原のお爺さんと飼い犬のナナ
長編 2021/10/17 22:13 4,512view

友人のAは、幼い頃に「あの世」を見たことがあるそうです。

当時、Aはナナという名前の芝犬を一匹飼っていました。

Aはナナを大切に可愛がっており、ナナもまた、Aに一番なついていました。

睦まじく遊ぶ姿は本当の兄弟のようだったそうです。

ナナの毎日の散歩はAの役割でした。

その日もAは、学校から帰ってくると、ナナを連れて夕方の散歩へ出かけました。

天気が崩れそうだったので、母親が「傘を持っていきなさい」と声をかけたそうですが、Aはすぐに帰ってくるし、大丈夫だろうと子どもらしい安易な考えで、傘を持たずに出かけてしまいました。

ナナの散歩コースは、家の裏手にある山道をぐるっと回って、神社にお参りをして帰ってくるというものでした。

山といっても小さな山です。遊び慣れている地元っ子のAにとっては、庭のようなものでした。

しかし、神社でお参りを済ませてさあ帰ろう、というときに、ポツポツと雨が降ってきました。

神社で雨宿りをすればよかったのですが、中途半端に小雨だったことと、もし雨が止まずに帰れなくなったら、お母さんから「だから傘を持って行けと言ったのに」とお小言を言われてしまうと思ったAは、慌ててナナを連れて帰り道を走り出しました。

ところが、雨は降り出して1、2分もしないうちにどんどん強くなり、あっという間に土砂降りになってしまいました。

Aは木陰で雨宿りをしようとしましたが、けぶるほどの大雨のせいでまったくしのぐことができません。

おまけに季節は11月。

ずぶ濡れになったAは、寒さでガタガタ震えながらナナを抱きしめ、泣きそうになっていたそうです。

どれくらい経ったでしょうか。

一瞬、雨が弱まった瞬間がありました。

土砂降りのせいで行くことも戻ることもできずに不安でいっぱいだったAは、ようやく弱まった雨を見て、「今だ!」と思ったそうです。

ナナのリードを握りしめると、勇気を出してまた帰り道を走り出しました。

しかし、気がはやっていたせいでしょうか。数メートル走ったところで、ぬかるみに足を滑らせて、Aは転んでしまいました。

リードから手を離してしまい、その拍子に、驚いたナナがあらぬ方向へ駆け出しました。

「ナナ!戻ってこい!」

と叫びながら、Aはナナが消えた茂みの方へ自分も走りました。

しかし、そこは運悪く傾斜面になっており、勢いよく突進してしまったAは、そのまま傾斜面をゴロゴロと転がり落ちてしまったそうです。

頭や身体をあちこち打って、Aは少しの間気絶してしまいました。

その時に、不思議な夢を見ました。

気がつくとAは、見たことのない薄暗い河原を、ナナを連れて散歩していたそうです。

河原はだだっ広くて、ほかに人影は見えません。

どう見ても異様な雰囲気ですが、どこか厳かな空気感があり、不思議と怖くはなかったそうです。

それに、一緒にいるナナは来たことがない場所にいるとは思えないほど普段通りで、尻尾を振ったり、Aの足にまとわりついてクンクン鳴いたりしながら、機嫌よく大人しくしています。

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コメント(5)
  • けぶる雨ってのが、非常にいい雰囲気を醸し出していて良かったです。
    男の子と雄犬だったんですね。
    女の子と雌犬だと思って読んでました。

    2021/10/18/10:16
  • 兄弟みたい から男の子と雄犬だと思ってました。
    読みやすくて分かりやすい語り口がすばらしいです。
    雨の中走るのは危険だし、走っても歩いても濡れる水分量はあまり変わらないのに何故走るのかわからないけど、人間は走ってしまうんですね。
    犬や猫は走らないはず。

    2021/12/07/06:22
  • 何処かで誰かに聴いた事が有ります。
    確かあの世の夢を見た場合出された食べ物は食べてはいけないと┅。
    私はあの世らしき夢は何度も見たことは有りますが、特に食べ物は貰ったって言うよりお腹が空いていたせいも有ると思うのですが、食べ物が次から次へと出てきて食べていました。
    その代わり味もなく食べても食べても満腹感が得られなかったのを覚えています、でも一度だけお婆さんが出てきてその人の部屋に招かれてお茶を出してくれた事が有ります、それはしっかり味も有って茶葉が立っていました、それから目が覚めました。
    その人が居る世界は、ここにいる人たちは皆、明治生まれの人で亡くなられた人たちばかりだと言っていました。
    そのお婆さんはあの世の案内人みたいな人で、その世界を一緒に色々の場所を回ってくれていた人でした。
    そこで知り合った人のなかで私の叔父にに似た人がいて、私の名前も知っていました。その事を叔父に話すと、その人は俺の兄かも知れないと言っていましたね。
    だけど記事ではナナが身代わりになってくれた話しで、私にはどうしても理解できません、何故連れていこうとしたのか?何故ナナが身代わりとなって連れていかれたのか、ワンちゃんも一緒に助けることも出来たはず、何か虚しくなる話、そのお爺さんは何者って言いたいです。

    2021/12/14/07:34
  • あの世の人の格好はいつまでもアップグレードしないよね。
    いずれ着物や袴なんかが漫画でも映像でも使われなくなったらあの世の人もカジュアルな服装になるのかな。
    YOYOYO、お嬢ちゃんYO
    マリトッツォ食いなYOって姿に変わるのかもしれん。

    2022/02/20/17:12
  • よもつへぐい、ですね。

    2023/03/15/11:19

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