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不思議体験

峰さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

友人Aが見た「あの世」 河原のお爺さんと飼い犬のナナ
長編 2021/10/17 22:13 4,607view
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そのおかげで、Aも落ち着いていました。

そのままナナを連れてトボトボとあてもなく歩いていると、ふと向こうからお爺さんがやってきたそうです。

まるで日本昔ばなしに出てくるような、古い着物を着た草履姿のおじいさんです。

そのお爺さんは、Aとナナを見ると、ニコニコと優しそうな笑みを浮かべて、「おお、よう来たよう来た。」と近づいてきました。

「遠くから来て疲れたじゃろう。ほんまによう来たなあ。」

とニコニコ話しかけてくるお爺さんはとても優しくて、Aはホッとしながら「こんにちは」などと挨拶をしたそうです。

お爺さんは、「お腹が空いたじゃろう。なあ、お腹空いたじゃろう」と言って、懐から何か包みを取り出しました。

その中には串に刺さったお団子が入っていて、お爺さんはしきりに、「食べなさい。疲れてお腹が空いとるじゃろう。これを食べなさい」と優しく勧めて来たそうです。

Aは途端にお腹がグーっと鳴って、そのお団子が物凄く美味しそうに感じられ、早く食べたい!という気持ちが込み上げてきました。

Aはお爺さんに「ありがとうございます」とお礼を言うと、そのお団子を受け取りました。

しかしその瞬間、それまでおとなしかったナナが突然、Aに飛びかかって、お団子を地面に落としてしまいました。

「あっ!!」

とAが叫ぶより早く、ナナは自分だけ、ガツガツとお団子を食べてしまったそうです。

普段なら絶対に人に飛びかかったり、人間の食べ物を欲しがったりしない犬だったので、Aはどうしてナナが突然そんなことをしたのか分からず、驚きのあまり止めることもできませんでした。

Aが、お爺さんに「すみません!」と謝ると、お爺さんはニコニコしたまま、「そうか、そうか」と頷いていました。

そしてしゃがんでナナを撫でながら「じゃあ、お前だけ来るか。」と言い、Aを見上げると、「あんたは帰りなさい。な、帰りなさい」と言いました。

その途端、Aは目を覚ましました。

辺りは暗く、雨が降っているのがわかりました。

そして、Aのお母さんや近所のおじさんがAを覗きこんでいて、「目ぇ覚ましたぞ!!」と叫んでいるのが聞こえたそうです。

そこからはバタバタしていてあまり覚えていないそうなのですが、Aは病院に連れて行かれ、検査をしてから、わりとすぐに家に帰ることができました。

雨の中、山の斜面を転がり落ちたのに、幸いにもほとんど無傷でした。

しかし、一緒にいたはずのナナはどこにも姿が見えません。

大人に聞くと、皆少し困ったような顔をして、「ナナはね、もう帰って来ないんだよ。虹のところに行ったんだよ」

とか、

「ナナはお別れしたんだよ。Aくんは悪くないからね。気にしなくていいんだよ」と言いました。

それで、ああナナは亡くなったんだと幼いAにも理解できたそうです。

ただ、ナナがその日どんな亡くなり方をしたのか、なぜ死んだのかはどれだけ聞いても誰も教えてくれなかったそうです。

Aはあの時、もしかするとナナが自分を助けてくれたのかもしれないと思っているそうです。

そして、Aは自分が傘を持って出ていたら、雨が降った時に神社で雨宿りをしていたら、ナナは死ななかっただろうととても後悔しました。

Aは今でもナナに、「僕のせいでごめん。助けてくれてありがとう」と心を込めて供養しているそうです。

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コメント(5)
  • けぶる雨ってのが、非常にいい雰囲気を醸し出していて良かったです。
    男の子と雄犬だったんですね。
    女の子と雌犬だと思って読んでました。

    2021/10/18/10:16
  • 兄弟みたい から男の子と雄犬だと思ってました。
    読みやすくて分かりやすい語り口がすばらしいです。
    雨の中走るのは危険だし、走っても歩いても濡れる水分量はあまり変わらないのに何故走るのかわからないけど、人間は走ってしまうんですね。
    犬や猫は走らないはず。

    2021/12/07/06:22
  • 何処かで誰かに聴いた事が有ります。
    確かあの世の夢を見た場合出された食べ物は食べてはいけないと┅。
    私はあの世らしき夢は何度も見たことは有りますが、特に食べ物は貰ったって言うよりお腹が空いていたせいも有ると思うのですが、食べ物が次から次へと出てきて食べていました。
    その代わり味もなく食べても食べても満腹感が得られなかったのを覚えています、でも一度だけお婆さんが出てきてその人の部屋に招かれてお茶を出してくれた事が有ります、それはしっかり味も有って茶葉が立っていました、それから目が覚めました。
    その人が居る世界は、ここにいる人たちは皆、明治生まれの人で亡くなられた人たちばかりだと言っていました。
    そのお婆さんはあの世の案内人みたいな人で、その世界を一緒に色々の場所を回ってくれていた人でした。
    そこで知り合った人のなかで私の叔父にに似た人がいて、私の名前も知っていました。その事を叔父に話すと、その人は俺の兄かも知れないと言っていましたね。
    だけど記事ではナナが身代わりになってくれた話しで、私にはどうしても理解できません、何故連れていこうとしたのか?何故ナナが身代わりとなって連れていかれたのか、ワンちゃんも一緒に助けることも出来たはず、何か虚しくなる話、そのお爺さんは何者って言いたいです。

    2021/12/14/07:34
  • あの世の人の格好はいつまでもアップグレードしないよね。
    いずれ着物や袴なんかが漫画でも映像でも使われなくなったらあの世の人もカジュアルな服装になるのかな。
    YOYOYO、お嬢ちゃんYO
    マリトッツォ食いなYOって姿に変わるのかもしれん。

    2022/02/20/17:12
  • よもつへぐい、ですね。

    2023/03/15/11:19

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