あいつ・・・、人の腕を食ってる!
同時にそれは失った自分の左腕だと直感が告げていた。
女は相変わらず俯いてYさんの腕をぐちゃぐちゃと音を鳴らしながら咀嚼している。
その度に抉られるような痛みが襲いかかる。
(やめろ・・・返せ・・・返せよ・・・!)
悶えながら必死に念じていたその時、突然女が動きを止め顔を上げた。
切れ込みの様な細い目、口元を血だらけにした年齢不詳の女は「痛イデショ…痛イデショ…」と囁くように呟き、そのままフッと姿を消したという。
次にYさんが気付いた時には既に日が昇っている時間になっていた。
もちろんYさんは方々にお祓いに行ったものの効果は全く無く、時と場所を問わず激痛に襲われる日々を送ることとなり仕事も退職を余儀なくされた。
「そりゃ効果なんてないわな。だってアレは俺自身に取り憑いているわけじゃないもん」
憔悴した青白い表情でそう口にするYさんのやつれた姿が印象に残っている、と三浦さんはぽつりと言った。
「・・・それで、Yさんは今どうしてるんですか?」
俺がそう問うと三浦さんは言いにくそうに口籠もり、
「実はその・・・Yさんあれからまた電車に飛び込んじゃって・・・」
と告げ、それから気落ちした声でこう付け加えた。
「でも僕がYさんと同じ立場になったらやっぱり同じ選択をすると思うんですよね。薬もお祓いも何も効かない、いつ始まり終わるか知れない痛みにひたすら怯えて耐えるだけの毎日って、あまりにも・・・辛すぎるじゃないですか」
場所と時期を伏せ、人名を全て仮名にすることを条件に三浦さんからこの話の公開の許可を得た。

























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