最終日は仕事を昼から休みを取って約束の時間に合わせてマンションへ帰った。
しかし、工事現場が妙だった。
1階のエレベーターのドアの前にはまるで地鎮祭のような、と言えばいいのか、祭壇とお供え物が一式用意してあり、神主さんの祈祷がすでに始まっていた。
その周りにはマンションの関係者や管理会社の担当者、マンションの住民、そして工事の主任と作業員も含めて15人ほどいて、しかも全員スーツや正装で立ち会っていた。
いくらエントランスが広いとはいえ、その人数ではさすがにかなり狭く、なによりエレベーターの工事としては異様な光景に思えた。
立ち会ったからには一通りの儀式が終わるまで参加しようと思い、最後まで見届けていた。
儀式が終わって解散すると、主任さんがこちらへと管理人室に誘ってきた。
管理人室に入ると、主任さんの説明を聞くまでもなく、その様子はまさに異様だった。
管理人室の床には、何十枚ものお札が並べられていたのだ。
「こ、これは…」
「エレベーターのカゴの内側にも外側にも、あらゆるところに貼られていたお札です。内側からは見えないように、その上からシートを被せていたのです。」
続けて
「時々エレベーターの調子が悪くなるのは、定期的にお札を貼り換えたり、誰かが妙な音を聞いたなどと報告があればその都度貼り換えに来ていたのです。」
「このエレベーターで何かあったんですか?」
と聞いてみたが
「いや…10年ほど前に管理会社が当社に変わりまして、その時に保守点検の会社も変わりました。」
「引継ぎとかでは何と言われました?」
「…いえ、お札を定期的に、また何かあった時にはすぐに貼り換えるように、という事くらいしか聞いてないんです。」
言われてみれば、エレベーターに乗ると内側の三方の壁にはパンチカーペットが貼り付けてあった。
それは荷物の搬入とかで内壁に傷をつけないようにと思っていたが、実はそうではなかった。
























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