数年前にマンションを買ったというBさんから聞いた話。
Bさんが買ったのは、5階のエレベーターのすぐ横の部屋だそうだ。
それまで住んでいたアパートが手狭になり、近くの手ごろなマンションを探していたところ、築30年を超えていたが維持管理がしっかりしている事がポイントだったという。
入居して間もなくエレベーターをまるごと交換するという工事の話が持ち上がった。
マンションが出来てからメンテナンスや消耗品の交換などで持ちこたえていたものの、交換部品の調達が年々難しくなってきて、このままでは長くは持たないということで工事が決まったのだ。
このマンションではエレベーターの保守点検は半年ごとに1回行われている事になっているが、時々細かな不具合があって、実際には毎月のようにメンテナンスが入っていたのも工事を決めた理由だったそうだ。
管理会社が積極的に動いたおかげで、それから数か月後に工事が始まった。
工事は日中に行われていて、ある程度音や振動が出るとの事だったが、Bさんはその時間は仕事に行っているので気にしてなかった。
工事が始まって3日ほど経った真夜中の2時か3時ごろに、エレベーターがある壁の方からかすかな音が聞こえてくるのに気が付いた。
おそらく、工事に使う機械や装置を夜中でも動かす必要があって、深夜とは言え止めることが出来ないのだろう。
次の日も同じような音が聞こえてきたので、まだ眠たかったがその音をよく聞いてみると、何か「甲高い音」がした後「ヒュー…ドン」という音が聞こえてきた。
それが数分おきに繰り返されている。
翌日は金曜日だったが有休を消化するため休みを取っていたので、寝ずにしばらく音を聞いてみることにした。
その甲高い音というのは、金属同士をこすり合わせたような、黒板に爪を立てた時のような、あるいは猫の鳴き声にも赤ん坊の泣き声にも聞こえた。
しかし最も近いものと言えば女性の悲鳴だろう。
だとすると、毎日深夜に女性の悲鳴のような音を聞いていたと思うと、正直気味が悪い。
翌日、昼過ぎに部屋を出て工事の様子を見てみようとして、作業員の人に聞いてみた。
「毎日、夜中に妙な音がするんですよ。女性の悲鳴のような音と何かが落ちるような音なんです。何か機械か何か動かしてますか?」
「機械の音…ですか。失礼ですが、最近入居されました?」
「2年ほどになります。」
「ああ…、ちょっと失礼します。主任!」
作業員は工事の責任者であろう、主任さんの所に行って小声で何か聞いている。
作業員が主任と戻ってくると、主任は
「申し訳ありません…、工事の最終日の夕方であればきちんとお話ししますので…それまではご辛抱くださいませんか…。」
「…はあ。最終日ですね?その日に何かあるんですか?」
「その時きちんとお話いたしますので…。」
主任さんの話が何とも歯切れが悪い。
「わかりました。じゃあその時はお願いします。」
工事現場には工程表が張ってあり、主任さんとともに日程と終わる時間を確認してその日は終わった。
























※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。