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特別投稿

礎吽亭雁鵜さんによる特別投稿にまつわる怖い話の投稿です

よく見える薬
長編 2026/09/06 00:50 53view

電車に乗っても車両の奥の方の中吊り広告の文字までがしっかりと読める。
さらに道を歩けば空の青さや木々の緑も鮮やかに感じ取れる。
これはすごい効果だと本当に驚いた。

出勤するとスタッフ一人一人の顔がよく見えるだけではなく、陳列している野菜のみずみずしさ、魚の鮮度の良さ、肉の脂のノリすべてがよく見えて売り場が輝いているようにすら思えた。

なんだがそのせいで気分も良く朝礼では柄にもなくこの店の素晴らしさ、スタッフの優秀さ頑張りを褒めちぎってしまった。
朝礼の後一人で事務作業をしていたが少し大袈裟に言いすぎたと恥ずかしくなってしまった。

しかしその日の私はいつもと違った。
店舗内をチェックしていると遠くに困ったような顔をしているスタッフを見つけ声掛けすると小さな問題が発生しているようだった。
詳細を聞くと判断を間違うと大きなトラブルになりかねないような問題を抱えており、しかもそのスタッフは十分に確認せずに自己判断で誤った対応をしかねない状況だった。
結果的に問題は大きなトラブルに発展することなく未然に解決することができた。

スタッフだけでなく様子のおかしいお客さまに積極的に声をかけさせていただくことで感謝される場面も多かった。
現場担当だったときは当たり前にできていたことだが店長になってから視野狭窄になっていたのか、一人一人を大切にするという視点が欠落していたのかもしれない。
人の顔がはっきりと見えるというだけでこれほどまでに仕事の質が変わるものなのかと気付かされた。
この勢いで来週からのクリスマス、年末商戦を店舗一丸となって乗り越えていこうと気合が入った。

その後、視力を取り戻した私は一層仕事にも身が入り、忙しいながらも充実した日々を過ごしていた。
店長業務にも慣れてきて生活にも少し余裕がうまれたので恥ずかしながら同僚からのススメでマッチングアプリなども始めてみた。

同僚に助言を受けながら自分の好みや希望する条件を入力して女性を検索する。
すると驚くほど美人な女性が多く、アプローチをかけるのをためらってしまいそうになるがプロフィールなどを拝見して興味の持てた女性にいいねをつけたりメッセージを送ったりとそれなりに婚活を楽しんでいた。

初めのうちこそ試行錯誤するも誰ともマッチしない日々ではあったが、だんだんと慣れてきたある日、Aさんという女性とメッセージのやり取りが続き、実際にお会いできることになった。
社会人になってからデートらしいデートはしてこなかったので念入りに準備をした上で当日を迎えた。

マッチングアプリに載っているAさんの写真はスレンダーなタイプで黒髪の大変きれいな感じだ。
ただ正直マッチングアプリの写真なんてどうせ加工しまくりだろうと疑っていたのだが、集合場所に現れたAさんは写真通りあるいはそれよりも美しい人で面食らってしまった。
驚きを彼女には気取られないように冷静を取り繕いながら事前に調べていたオシャレなカフェでランチをとりお話をする。
どうやらAさんはこんなにもきれいなのにあまりというかほとんど男性と交流をしたことがないらしい。
そのせいか男性の私を前にして少し緊張感というかオドオドした感じがAさんの表情に現れているのが見てとれた。
そこでできるだけこちらで会話はリードしつつAさんに話を振って私は今度は聞き手に回るようにすることで徐々に彼女の緊張もほぐれていくのがわかった。

その日はランチのみで解散したが帰りの電車の中でAさんからLINEに返信があり、とてもたのしくお話しできたこと、男性といて緊張せずに話せたのは始めてであったこと、また近いうちに会いたいことが綴られていた。
私としても大変嬉しく電車が最寄駅に着く頃には来週また会う約束を取り付けていた。

その後数回のデートを経て私はAさんと交際することになり、半年後にはプロポーズをして無事受け入れてもらうことができた。
その後は怒涛のスケジュールでさまざまなことをこなしていった。

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