これは1年前に起きた体験だが今でも鮮明、記憶、怯えている話です。
こういう体験談もあるんだなと思ってもらえたら結構だと思います。
弁護士として3年近く現場に立っていると、ニュースや判例集には絶対に載らない「表に出ない出来事」に遭遇することがあります。
これは、僕が30代半ばになった今でも、夜中に思い出すだけで背筋が寒くなる、ある「未公表の案件」についての記録です。
1年前の冬、ある指定暴力団(山◯組)の幹部A氏の弁護を急遽引き受けることになりました。罪名は単純な恐喝容疑でしたが、警察署での接見(面会)の段階から、通常とは明らかに異なる違和感がありました。
それは普段の留置場とは異なり、廊下には私服の警察官が異様な数配置されていて、接見室に入る際、メモ用紙以外の持ち込みが一切認められなくて尚且つ驚いたのが強面で知られる武闘派の幹部のはずが、取り調べ室の奥でガタガタと震え、顔面蒼白になっていたことです。
接見室に入り、アクリル板越しに向かい合ったA氏は、開口一番、震える声でこう囁きました。
「先生、俺をここから出さないでくれ。刑務所でもどこでもいい、表の奴らに見つからない場所に閉じ込めてくれ」
逮捕された容疑者は普通、一刻も早い保釈や釈放を望みます。しかし、彼は警察の取調室の中に「護衛」として逃げ込んでいたのです。
A氏の話によれば、彼の組はある外資系企業の利権に割り込もうとし、その企業の「内部情報」を握ったとのことでした。しかし、相手はただの企業ではありませんでした。背後に存在していたのは、某北国の情報機関——いわゆる諜報員のグループだったのです。
A氏が語った恐怖の実態は、ヤクザの抗争などという生易しいものではありませんでした。
情報を握った組員が、防犯カメラの死角で一瞬にして消失して自宅の電化製品や通信機器がすべて乗っ取られ、部屋の中で誰かが呼吸している気配が消えないそうです。そして、脅迫や交渉など一切なく、関わった人間が次々と「心不全」や「不審事故」として物理的に処理されていくということです。
「ヤクザの脅しは『殺すぞ』だが、あいつらは何も言わずに『存在を消す』んだ……」
A氏がそう語り終えた直後、突然、警察署全体の電源が落ちました。
暗闇の中で非常灯が点灯するまでの数十秒間。接見室の外の廊下で、足音ひとつ立てない「何か」が通り過ぎる気配がしました。重苦しい圧迫感と、微かな機械的な駆動音。
明かりが戻ったとき、アクリル板の向こう側にいたはずのA氏は、椅子に座ったままピクリとも動かなくなっていました。
外傷はありません。ただ、目を見開いたまま静かに息絶えていました。
その後、現場は騒然となりましたが、翌日には信じられないことが起きました。
事件の抹消: A氏の逮捕記録そのものが警察のデータベースから消去された。
公式発表なし: ニュースで報道されることもなく、死亡診断書には「持病による急性心不全」と記載された。
警告の電話: 私の事務所に、番号非通知で「これ以上、何も書き残すな」とだけ告げる機械音声の電話がかかってきた。
テレビや新聞で報じられる暴力団事件や国際ニュースは、世の中の出来事のほんの表面に過ぎません。表の社会のルールで動く極道の世界ですら、国家の影で動く本物の「諜報」の前には、ひとたまりもなく破滅させられます。
僕が引き受けたはずのあの案件の書類は、今や事務所の金庫のどこを探しても見つかりません。
街ですれ違う普通の人々の中に、あるいは隣の部屋に、表の法も警察も届かない「別の世界」の住人が紛れ込んでいる——その現実を知ってしまってから、僕は夜のオフィスで一人になるのが、今でも恐ろしいのです。


























怖ぁ