中には、黄ばんだ一枚の便箋が入っていました。
便箋を開いた瞬間、林さんはその『筆跡』に見覚えがあることに気づきました。 20年以上前、依頼人の徳田が見せた、あのサエキヒロシとしての履歴書の写し。そして、徳田が必死に書き溜めていた調査のメモ。その、几帳面で整った、あのサエキヒロシの字だったんです。
そこには、ただ一行。
『やっと、サエキヒロシが見つかりました』
林さんは心臓を鷲掴みにされたような衝撃を覚えたといいます。徳田は本当の自分である“サエキヒロシ”にどうやって辿り着いたのか。いや、そもそも自分を見つけたとはどういうことなのか。その一文の意味に困惑しているとさらに驚くことになります。
手紙の文末に添えられていた日付を見て、林さんは絶句しました。
その日付は、「昭和60年8月4日」となっていました。
2000年代でもなく、ましてや平成でもない。サエキヒロシが大阪から葬儀のために帰省し、行方不明になった、まさにあの「事件」が起きた当時の日付だったんです。 20年以上前の手紙が今届いたのか? それとも、誰かがいたずらで昔の日付を書いたのか?
林さんはたまらず、その手紙をその場で破り捨てました。これ以上関わってはいけない、そう思った彼はこの件から完全に手を引くことにしたのです。
「徳田のいう事が全て本当だとしたら、彼は一体何に巻き込まれたんだろう。亡くなった父親が別人になって、自分自身も別人になって、本来の“サエキヒロシ”はどこにいってしまったのだろうか。精神病の一言で済ませることができるかもしれない。でもね、私が調査した限り、サエキヒロシも徳田も存在していたのは間違いないんだよ。だからこそ、彼の実家がある日突然消えてしまったことも不可解で仕方ないんだけどね」

























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